猫の感染症は何がある?

猫の感染症には、さまざまな種類があります。ウイルスが原因の病気もあれば、カビ寄生虫が引き起こす病気もあります。感染症によっては、猫の命にかかわる重篤な症状を起こす病気もあり、早急に動物病院の受診が必要な場合もあります。また、猫から人に感染する人獣共通感染症もあり、飼い主さまが感染症について正しい知識を持つことが大切です。


本記事では、猫の感染症16種類と猫から人にうつる人獣共通感染症について紹介します。感染症を防ぐ方法も紹介しますのでぜひ最後までご覧ください。

 

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目次

猫の感染症16種類を徹底解説!

猫の感染症について

感染症対策をするには、猫の感染症の症状や感染経路などを知っておくことが大切です。ここでは、猫の感染症を16種類紹介します。

 

猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)

猫凡白血球減少症(ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょう)とは、猫汎白血球減少症ウイルスによって引き起こされる死亡率の高い病気です。とくに子猫の死亡率は75~90%というデータがあり、非常に死亡率が高いとわかります。発症すると食欲不振や40度以上の高熱が出て、末期になると嘔吐・下痢など消化器系の異常があらわれます。

猫汎白血球減少症は、ウイルスに感染した猫の排泄物、ノミ、ケージや食器などから感染します。現在、体内に入ったウイルスを駆除する特効薬はないので、病気にならないようにワクチン接種を行い、予防することが大切です。

 

猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルスに感染し引き起こされる病気です。発熱、元気消失、食欲不振といった症状のほかに貧血免疫不全、リンパ腫などがみられます。

感染経路は、母子感染や食器、猫同士の毛づくろい、排泄物などです。ウイルスを駆除する治療法はなく、あらわれた症状に合わせた治療が行われます。まれに猫の免疫機能でウイルスが駆除されることがありますが、駆除されない場合は持続感染の状態となります。4種混合ワクチンを打つと予防可能です。

 

猫免疫不全ウイルス (FIV) 感染症(猫エイズ)

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症は、免疫が働かなくなる病気で、別名猫エイズとも呼ばれます。発症すると体重減少、貧血、口内炎、歯肉炎、慢性鼻炎、リンパ節炎などの症状があらわれます。

感染した猫の体液や喧嘩による咬傷などから感染するとされており、人や犬には感染しません。感染後、無症状のまま暮らす猫もいますが、発症すると数カ月~数年で命を落とす場合もあります。特効薬はなく、治療は症状を和らげるための対症療法を行います。野外に出すと感染リスクがあがるため、完全室内飼育で予防可能です。

 

猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫伝染性腹膜炎は、猫コロナウイルス(FCoV)によって起こる致死率が高い感染症です。猫伝染性腹膜炎には2種類のタイプがあり、ウェットタイプ腹膜炎を引き起こし、腹部に水が溜まります。一方、ドライタイプは腹膜炎にならず、肝臓や腎臓にしこりができます。

主な感染経路は排泄物です。まれに母子感染が起こる可能性もあります。発症した場合、有効な治療方法がなく、対処療法を行うことが多いでしょう。治療薬が開発され徐々に浸透してきていますが、対応可能な病院が少なく、どの動物病院が対応可能か治療費も含めて確認しましょう。多頭飼育を避けたり、過度なストレスを与えたりしないことが感染予防になります。

 

猫ヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)

猫ヘルペス感染症とは、猫ヘルペスウイルスによって起こる病気です。風邪に似た症状が多く、鼻水、くしゃみ、目やに、結膜炎、元気消失などがみられます。重症化すると発熱や呼吸困難、肺炎などの症状を引き起こします。

感染経路は、排泄物、唾液などの分泌液による飛沫感染です。治療は症状に合わせて行い、内服薬や点眼薬などが処方されます。一度感染すると体内のウイルスの根絶は難しく、何度も再発します。猫ヘルペス感染症は、ある程度ワクチン接種で予防可能です。

 

猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルス感染症は、通称「猫風邪」と呼ばれる上部気道感染症です。発熱、くしゃみ、鼻水、食欲不振など猫ヘルペス感染症と似たような症状がみられます。重症化すると、肺炎になり命を落とすこともあります。

感染経路は、感染した猫の唾液や鼻水などによる飛沫感染や空気感染です。病原性が非常に強い強毒全身性カリシウイルスの存在も報告されており注意が必要です。治療は症状を和らげる対症療法が行われます。予防にはワクチンが使用されますが、変異株や強毒性ウイルスには効果がないとされています。

 

クラミドフィラ フェリス感染症(猫クラミジア感染症)

クラミドフィラ フェリス感染症は、クラミジアという細菌に感染すると起こる病気です。猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスと同様に、風邪に似た症状がおこるため、猫風邪とも呼ばれます。初期には結膜炎があらわれ、徐々に鼻水、くしゃみ、咳などの症状がみられるのが特徴です。

母子感染や感染した動物の排泄物から感染する病気です。治療には、クラミジアに有効な抗生物質を点鼻や点眼で投薬します。予防するには、ワクチン接種と完全室内飼育を徹底することが重要です。

 

猫ヘモプラズマ感染症

猫ヘモプラズマ感染症は、猫ヘモプラズマと呼ばれる細菌が赤血球に寄生して起こる病気です。初期症状には発熱が多くみられ、ほかにも溶血性貧血、元気消失、食欲不振、黄疸、血尿などの症状があらわれます。

母子感染、ノミ・ダニ、輸血、喧嘩による外傷などから感染するのが特徴です。治療には猫ヘモプラズマに有効な抗菌剤が処方され、1~2週間程度の投薬を継続します。猫同士の喧嘩や外部寄生虫が感染経路となるため、予防には室内飼育の徹底が必要です。

 

猫ひっかき病

猫ひっかき病とは、パルトネラという細菌が原因となる感染症です。猫のひっかき傷や咬傷によって、傷を負った側に発熱やリンパ節の腫れなどの症状があらわれます。猫同士だけでなく、猫から人へも感染する注意が必要な病気です。

主な感染は、ひっかき傷や咬傷ですが、猫同士ではノミを媒介して感染するケースもみられます。軽症の場合は経過観察とし、リンパ節の腫れなどがあるときは積極的に抗生物質を投与します。ワクチンはないため、予防するには飼い猫から感染しないように爪切りやノミの駆除などを行いましょう。

 

Q熱

Q熱はコクシエラという病原菌が人間犬猫、牛、羊、ヤギなどに感染する病気です。国内における感染の実態や病像に関してのデータが少なく、不明点の多い感染症です。高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、下痢、嘔吐などの症状がみられますが、死亡する可能性は低いとされています。

動物の排泄物や、乳製品や牛肉などを食べると感染します。治療には抗生物質を使用し、約2週間で完治します。Q熱のワクチンはなく、排泄物を適切に処理したり、殺菌していない牛乳を使用した乳製品の摂取を避けたりすることが大切です。

 

SFTSウイルス感染症(重症熱性血小板減少症症候群)

SFTSウイルスを持つマダニに咬まれると感染する病気です。発熱、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、意識障害、リンパ節の腫れなどの症状があらわれます。国内でも感染症にかかった猫に人が咬まれてSFTSウイルスに感染した事例が報告されています。

効果のある治療法は確立されておらず、対症療法を行います。猫がマダニに咬まれた場合は指でつぶさずに、必ず動物病院を受診しましょう。感染症を予防するためには、猫にノミ・マダニの駆虫薬を定期的に投与することが必要です。

 

フィラリア症(犬糸状虫症)

フィラリア症とは、フィラリアと呼ばれる寄生虫が蚊を介して、猫の心臓に寄生する感染症です。食欲不振、体重減少、嘔吐、咳などの症状がみられます。エコーや血液検査でみつけるのは難しく、フィラリア症と診断されずに突然死に至る可能性もあります。

1か月に1回、フィラリア予防薬を投与し感染したフィラリアを駆除し、成虫になることを防ぎます。成虫になり心臓に寄生してしまうと突然死の原因になる場合もあります。薬で駆除することも難しいでしょう。フィラリアが寄生してから治療することは難しく、猫にとって負担が大きいため、感染しないように毎月駆虫薬を使用して予防しましょう。

 

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症

コリネバクテリウム・ウルセランスという細菌感染によって起こる感染症です。咳、くしゃみ、鼻水、皮膚炎などの症状がみられます。

コリネバクテリウム・ウルセランス菌は、動物に常在している細菌です。犬や猫、牛などの動物から人にうつり、重篤な場合は死に至ることのある病気です。感染の診断をされた猫の治療には、抗菌薬が使用されます。感染が疑われる症状があらわれたら、早めに動物病院を受診しましょう。

 

パスツレラ症

パスツレラ菌によって引き起こされる病気です。猫に感染した際には、ほとんど症状があらわれませんが、肺炎、鼻水、外耳炎、皮下腫瘍などがみられる場合もあります。

パスツレラ菌は、多くの猫が口腔内や爪に常在している細菌です。パスツレラ症は、動物から人にうつり、免疫が弱い高齢者や持病のある人は重症化しやすく注意が必要です。猫同士の喧嘩による外傷から感染することがわかっており、多頭飼育の場合は、喧嘩をさせないような環境作りが大切です。

 

トキソプラズマ症

トキソプラズマという寄生虫によって起こる感染症です。多くの猫は、感染しても症状はありませんが、子猫の場合は重症化する可能性があります。

感染経路は感染した猫の排せつ物です。人にもうつる病気で、とくに妊婦が感染すると胎児に障害を与える可能性があります。治療には抗原虫薬や抗生物質が使用され、同時に対症療法も行います。排せつ物の適切な処理と、猫を外に出さないことが感染の予防につながります。

 

真菌症(皮膚糸状菌症)

真菌とはカビを指す言葉で、カビに感染して猫にカビが増殖した状態を真菌症と呼びます。病原真菌の種類によってカンジダ症などのさまざまな種類に分けられますが、猫によくみられるのは皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)です。円形脱毛やフケなどの症状がみられます。

感染経路は、皮膚糸状菌に感染している動物との接触です。人間にもうつる人獣共通感染症で、人に感染すると赤い環状の発疹がみられます。治療には患部の消毒、塗り薬や内服薬を使用します。感染を予防するには、猫の生活環境を整えてストレスを与えないことが大事です。

動物病院に連れて行くタイミング

動物病院にいくタイミング

猫風邪の場合、健康な猫で症状が1日程度でなくなれば動物病院に連れて行かず、様子見でいいでしょう。ただし、症状が悪化すると肺炎やウイルス性鼻気管炎などを発症する恐れがあり、子猫や高齢猫は重症化しやすいため、早めに動物病院に連れて行くことをおすすめします。

病気の種類にかかわらず、発熱や激しい嘔吐・下痢、元気消失、食欲不振などの症状がみられる場合、危険な状態である可能性があるため、早急に獣医師に相談する必要があります。

猫が感染症にかかったときの治療費

猫の感染症の治療費は、感染症の種類や症状によって変化します。


・猫風邪

診察料は約1,000円、1週間分の薬は約5,000~1万円かかります。


・猫白血病ウイルス感染症

抗ウイルス作用を期待できるインターフェロン治療は、1回5,000円程度かかる場合があります。


・猫エイズ

インターフェロンは1回1,000~5,000円程度です。ステロイド剤を使用した治療を行う場合は、1回1,000〜4,000円かかります。


高額な治療費がかかる感染症が多く、あらかじめペット保険に加入しておくと安心できます。

猫の感染症を予防するための対策は?

猫の感染症予防に最も重要なのは、飼い猫の完全室内飼育の徹底です。感染症によっては、以下のように混合ワクチンを摂取すると予防可能な病気もあります。

ワクチンにより予防できる病気

・猫ウイルス性鼻気管炎

・猫カリシウイルス感染症

・猫汎白血球減少症

・猫クラミジア感染症

・猫白血病ウイルス感染症

・猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)

また、寄生虫が媒介する感染症は、ノミ・マダニの駆虫薬を与えると予防できます。


さらに、病気予防には日頃から健康的な食事を与え、適度な運動をさせて猫の免疫力を保つことも重要です。人間の服や靴などを介して感染する病気もあるため、外で野良猫やほかの動物と触れ合ったあとは、飼い猫に安易に近寄らないようにしましょう。

猫から人へうつる人獣共通感染症

動物と人間の間でうつる感染症を「人獣共通感染症」といいます。人獣共通感染症は、「同じ病原菌によって脊椎動物と人間の間で通常状態で伝播しうる疫病(感染症)」と定義付けられています。猫から人にうつる病気は以下の通りです。

・トキソプラズマ症

・猫ひっかき病

・パスツレラ症

・Q熱

・真菌症(皮脂糸状菌症)

・瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)

・回虫症(猫回虫)

猫から人への感染を予防する方法

猫の爪切り

猫から人への感染症を予防するには、人獣共通感染症についての正しい知識を持つことが重要です。猫から人へ感染する病気を正しく知ると、病気を防ぐために猫との接し方のルールを決められます。


猫にキスをしたり口移しで食べ物を与えたりする行為は避けて、猫と触れ合ったあとは必ず手洗いをしましょう。そして、感染症を防ぐためには、ブラッシングシャンプーなど日頃のケアも行い、猫を清潔な状態に保つことも必要です。

・猫を寝室に入れない

・猫に引っかかれたり噛まれたらすぐ消毒する

・猫の爪をこまめに切る

・猫にキスや口移しなどをしない

・猫の排泄物は24時間以内に処理する

・食器類や猫トイレをこまめに熱湯消毒する

・猫の周りの環境を清潔に保つ

・猫と幼児だけで遊ばせない

・妊婦や免疫力の低下している人には世話をさせない

まとめ

本記事では、猫の感染症16種類と人獣共通感染症について紹介しました。

・猫の感染症は適切に感染予防を行うと予防できる

・発熱や激しい嘔吐・下痢、食欲不振などがあれば早めに病院を受診する

・感染症の治療費は高額になる可能性が高い

・動物と人間との間で感染する病気を人獣共通感染症という

・猫から人へ病気をうつさないために、感染症の正しい知識を持つ必要がある

猫と接するときは、キスなど過度なスキンシップは避けて、節度あるスキンシップに留めましょう。触れ合い後の手洗いを忘れないことも重要です。

 

※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
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万が一の備えとしてペット保険に加入しておくと安心です。
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獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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