猫の甲状腺機能亢進症とは

「最近、猫の鳴き声が大きい気がする」
「老猫の割に元気だけれど、痩せてきたかも」

もし愛猫にそんな違和感があるなら、それは単なる老化ではなく「甲状腺機能亢進症」という病気のサインかもしれません。

甲状腺機能亢進症は、進行すると心不全や腎不全を併発するおそれもある病気です。「これからどうなるの?」「余命はどのくらい?」「治療費は?」と、多くの不安を抱えている方もいるでしょう。

本記事では、飼い主さまが今すぐ知っておくべき情報を網羅して解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

【この記事でわかること】

  • 猫の甲状腺機能亢進症の原因は?
  • 甲状腺機能亢進症は自然治癒するのか
  • なぜ甲状腺機能亢進症になると夜泣きが増えるの?
  • 甲状腺機能亢進症の治療費はどれくらい?
  • 甲状腺機能亢進症になった猫の余命や末期症状
目次

猫の甲状腺機能亢進症とは?3つの原因も解説

猫の甲状腺機能亢進症とは、のどにある「甲状腺」という器官の機能が高まり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。

甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化させる役割を持っています。このホルモンが過剰に分泌されると、いわば「常に全力疾走している状態」になり、身体や各臓器に大きな負担がかかって、さまざまな症状を引き起こします。

 

猫の甲状腺機能亢進症の原因となるのは?

猫の甲状腺機能亢進症は、主に以下の3つが原因と考えられています。

  • 甲状腺腫瘍
  • 甲状腺の過形成
  • 甲状腺ホルモン剤の過剰投与

甲状腺機能亢進症になると、見た目で分かるほど甲状腺が大きくなることもあります。ちなみに、甲状腺腫瘍の多くは良性で、悪性の甲状腺がん2%程度です。

 

甲状腺機能亢進症になりやすい猫の特徴は?

甲状腺機能亢進症は、どの猫種でも発症する可能性がありますが、特に高齢の猫で発症しやすいといわれています。

例えば、アメリカや日本の調査では、7歳以上の猫のおよそ10%が甲状腺機能亢進症を発症しているというデータもあるのです。

「シニア期に入ったら、どの猫でもかかる可能性がある身近な病気」として、飼い主さまは日ごろから注意を払っておく必要があります。

参照:日本小動物獣医学会「大阪および中国地方における猫の甲状腺機能亢進症の発生」
参照:猫の甲状腺機能亢進症の診断と治療

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猫の甲状腺機能亢進症の症状と「鳴き声」の変化

甲状腺機能亢進症の症状

ここでは、猫の甲状腺機能亢進症について、初期症状と末期症状にわけて解説します。

 

初期症状│早期発見のポイント

甲状腺機能亢進症の初期は、代謝が上がることで一見「活動的で元気」に見えるため、病気に気づくのが難しいのが特徴です。しかし、体内では確実に負担がかかっており、以下のようなサインがあらわれます。

  • 食欲が増加するのに痩せてくる
  • 多量に水を飲み尿量も増える
  • 攻撃的になる
  • 落ち着きがなくなる
  • 目がぎらつく
  • 毛艶が悪くなる・脱毛
  • 消化器症状(嘔吐・下痢)

たとえ食欲や元気があっても、猫が普段と違う様子をみせたら、注意してよく観察するようにしましょう。

関連記事:猫が吐く原因と対処法、受診すべき症状と治療費は?

 

◆なぜ「鳴き声」が大きく、激しくなるのか?

猫が甲状腺機能亢進症になると、上記のほかに「異様に大きな声で鳴く」「夜鳴きをする」といった行動の変化がみられることがあります。これは、過剰なホルモン分泌によって代謝が上がり、猫が常に興奮状態になってしまうことが原因です。

シニア猫が夜中に激しく鳴き続ける場合は、単なる老化現象ではなく、この病気を疑う必要があります。

 

末期症状│腎臓病・心不全を併発することも

適切な治療をせずに放置すると、やがて食欲が低下し、急激に衰弱していきます。末期には、高血圧からくる「腎臓病」や「心不全」などを併発しているケースが多く、不整脈による突然死のリスクも高まります。

ここで注意が必要なのは、「甲状腺の治療を始めると、隠れていた併発症の症状が表面化する場合がある」という点です。 だからといって治療を諦めるのではなく、検査によってほかの病気の状態もしっかり把握し、並行してケアを行っていくことが、愛猫の命を守る唯一の方法です。

甲状腺機能亢進にはどんな検査が必要?

甲状腺機能亢進症の検査

甲状腺機能亢進症と同じような症状を示す病気はほかにもあるので、いくつかの検査を通して診断を確定しなければなりません。

甲状腺機能亢進症が疑われる猫に対しては、主に以下のような検査が行われます。

  • 触診
  • 血液検査
  • 超音波検査

特に診断で重要視されるのが、血液中の甲状腺ホルモンの濃度を測定する血液検査の値です。動物病院でこの検査を行えるところもありますが、専門の機関に検査を依頼する場合は、数日後に結果が分かります。

猫の甲状腺機能亢進症の治療法│投薬・療法食・手術について

猫に薬を飲ませる方法

猫の甲状腺機能亢進症の主な治療法には「投薬治療」「療法食」「外科手術」の3つがあり、病態の進行度、年齢、併発疾患の有無を総合的に判断して決定されます。

  • 投薬治療:内科的なホルモン合成の抑制
  • 療法食:ヨウ素制限による食事療法
  • 外科手術:甲状腺の摘出手術

 

1. 投薬治療(内科的なホルモン合成の抑制)

抗甲状腺薬を用い、体内で甲状腺ホルモンが合成されるのを阻害する治療法です。治療開始時は定期的な血液検査を行い、「最適投与量(維持量)」を慎重に見極めます。

投薬治療はあくまで対症療法であり、甲状腺の病変自体を消失させるものではありません。そのため、原則として生涯にわたる継続的な投薬が必要です。また、副作用として一過性の食欲不振や嘔吐、稀に顔面の掻痒感(そうようかん)や血球減少が認められることもあるため、獣医師による定期的なモニタリングが不可欠です。

 

◆主要な治療薬:メルカゾール(成分名:チアマゾール)

メルカゾールは、過剰なホルモン分泌を抑制する標準的な治療薬です。投与量や回数の自己判断による増減は、病態を急激に悪化させる、あるいは逆に低下症を招くおそれがあり非常に危険です。個人輸入等で入手した場合でも、かならず獣医師の診断と処方に基づいた指示を遵守してください。

 

2. 療法食(ヨウ素制限による食事療法)

甲状腺ホルモンの主原料である「ヨウ素」の摂取量を極限まで制限することで、ホルモンの過剰な分泌を抑える治療法です。投薬が困難な症例において有効な選択肢となります。

 

食事療法の成功には「療法食以外の食べ物を一切口にしないこと」が絶対条件です。少量のおやつやほかの食事を与えただけで治療効果が消失するため、同居猫がいる場合や外出する習慣がある猫には注意が必要です。また、腎機能への影響を考慮する必要があるため、かならず専門的な診断のもとで導入を検討してください。

 

3. 外科手術(甲状腺の摘出手術)

病変のある甲状腺を外科的に摘出する、根治を目指した治療法です。以下のような、内科的療法でのコントロールが困難な症例において検討されます。

  • 悪性腫瘍(甲状腺がん)が疑われる場合
  • 副作用等の理由で抗甲状腺薬が使用できない場合
  • 投薬によるコントロールが著しく困難な場合

なお、高齢猫の場合は全身麻酔のリスクや、術後の副甲状腺機能への影響を考慮する必要があります。術前検査を徹底し、外科的介入のメリットがリスクを上回る場合に行われます。

猫の甲状腺機能亢進症の治療費用の目安

猫の甲状腺機能亢進症の治療費は、動物病院や治療の内容によって大きく異なります。目安としては投薬治療1回で1〜2万円程度、外科手術であれば入院費用も含めて10万円以上かかるケースもあるでしょう。

さらに、甲状腺機能亢進症は1度発症すると、一生治療やケアを継続しなければなりません。そのため、トータルの治療費はもっと高額になる可能性があります。

甲状腺機能亢進症になった猫の余命│自然治癒や進行速度について

甲状腺機能亢進症は、残念ながら自然治癒することはありません。だからといって、症状が出ているのに長期間放置してしまうと、猫の寿命を短くする可能性があります。初期段階では元気なように見えることや、数か月から数年かけて比較的ゆっくり進行することから、早期発見が難しい病気です。

 

治療の有無で変わる余命

治療を行っている猫の平均的な生存期間は、およそ2~5年というデータがありますが、治療の内容や開始時期によって大きく異なります。

また、「慢性腎不全」や「抗窒素血症」といった甲状腺機能亢進症以外の病気を併発している場合は、甲状腺機能亢進症のみを発症している猫と比べて、著しく余命が短くなるという調査結果も報告されています。

 

猫の余命を伸ばすことだけが正しいとは言いきれませんが、甲状腺機能亢進症を発症した猫に長生きしてもらうには、早い段階で適切な治療を受けさせることが重要です。

参照:Diagnosis and management of feline hyperthyroidism: current perspectives

甲状腺機能亢進症の予防方法はある?

残念ながら、猫の甲状腺機能亢進症を確実に防ぐ、明確な予防法は確立されていません。

この病気は加齢に伴う生理的変化や体質が深く関わっているため、発症そのものを食い止めることよりも、「早期発見・早期治療」によって、身体へのダメージを最小限に抑えることが実質的な予防策となります。

高齢猫(7歳以上)の飼い主さまは年に1回、できれば年に2回の健康診断をおすすめします。日々の観察と定期健診を組み合わせ、小さな変化を見逃さないようにしましょう。

まとめ│愛猫の異変を見逃さないように要チェック

この記事では、猫の甲状腺機能亢進症の症状や原因、検査や治療方法、そして余命や進行速度などについて解説しました。初期段階では「以前より元気になった」と見過ごされがちですが、早い段階で適切なコントロールを開始できれば、内臓への負担を抑え、愛猫と穏やかな時間を長く過ごすことが可能です。

愛猫に少しでも普段と違う様子がみられたら、速やかに動物病院を受診してください。早期の適切なケアこそが、愛猫の長寿を守る唯一の方法です。

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この記事の監修者 ペット保険比較のピクシー編集部
ペット保険の専門家であるメンバーがコラムを監修しています。少額短期保険募集人、損害保険募集人、ファイナンシャルプランナー、愛玩動物飼養管理士、いぬ検定、ペット防災指導員、犬のしつけインストラクターなどの数多くの資格を保有。犬や猫などの動物が大好きで、飼育歴は10年以上です。知識や経験を活かして、さまざまなお役立ち情報をお届けします。

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