猫の乳腺は左右4対、合計で8個あります。この乳腺に一つもしくは複数個しこりができている状態を乳腺腫瘍といいます。猫の乳腺腫瘍は90%近くが悪性といわれており、命に関わることもあります。乳腺腫瘍の症状、治療法、予防法について解説します。
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乳腺腫瘍という病気について
乳腺腫瘍は乳腺にできる腫瘍で、避妊手術を行っていない場合に発症しやすいといわれています。発症しやすい年齢は約10歳ですが、それ以前にも起こる可能性はあります。乳腺腫瘍は猫に起こる腫瘍のなかで3番目に多い腫瘍といわれており、非常に稀ですがメスだけでなくオスに起こる場合もあります。
乳腺腫瘍は1か所だけに起こることもありますが、乳腺は繋がっているため1か所できるとほかの乳腺に発症することは珍しくありません。
犬の乳腺腫瘍の良性と悪性の割合は1:1とされますが、猫の場合は80~90%は悪性といわれています。さらに、肝臓や腎臓、脾臓などの臓器に転移する場合があります。
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猫の乳腺腫瘍の症状
具体的な症状を飼い主さまが知っておくことは早期発見、早期治療につながります。では、乳腺腫瘍の症状にはどのようなものがあるのでしょうか?初期症状と末期症状に分けて紹介します。
初期症状
乳腺腫瘍の初期症状として一番わかりやすいのは乳腺にできるしこりです。最初は直径1〜2mm程度の大きさですので判別しにくいかもしれません。
8個ある乳腺のうち比較的できやすいのは第3乳頭、第4乳頭です。痛みがなく、触っても嫌がらないのが特徴で、猫自身も気づいていないことの方が多いでしょう。全身状態に問題はほぼなく、食欲や元気も普段と変わりません。
末期症状
乳腺腫瘍が重症化すると一つ一つの腫瘍サイズが大きくなり、猫自身が気になると噛んだり舐めたりして、腫瘍の表面が潰瘍化する場合があります。
さらに悪化すると乳腺腫瘍の一部分に穴が開いたようになり、出血や壊死が起こります。体調に異変があらわれることもあります。
猫の乳腺腫瘍は80~90%が悪性ですので、リンパ節やほかの臓器に転移が起こり命にかかわる事態になることもあります。
乳腺腫瘍のリンパ節転移
先述しましたが、猫の乳腺腫瘍は80〜90%が悪性で乳腺がんと呼ばれます。リンパ節に転移することが多く、さらに肝臓、腎臓、脾臓などへの転移もあり得ます。腫瘍の大きさが3cmを超えていて、リンパ節に転移しており遠隔転移もある場合は予後が悪いといわれています。
猫の乳腺腫瘍の原因となるのは?
猫の乳腺腫瘍は性ホルモンの影響を受けるといわれています。早期に避妊手術をすることで乳腺腫瘍の発生率は下がり、初回発情前に避妊手術を行うことで95.5%の予防ができるとされます。
乳腺腫瘍になりやすい猫の特徴
あらゆる猫種が乳腺腫瘍になるといわれていますが、ほかの猫に比べてシャムや日本猫はなりやすいといわれています。
避妊手術をしていない猫、2.5歳以上で避妊手術を行った猫、中高齢の猫は乳腺腫瘍になりやすいでしょう。特に、避妊手術を行う年齢は重要で、2.5歳以上で避妊手術を行った場合はほぼ乳腺腫瘍の予防ができません。
猫の乳腺腫瘍の検査や診断法
乳腺腫瘍の検査で真っ先に行うのは触診です。左右の乳腺を丁寧に触診して、乳腺腫瘍ができている場所とその大きさを確認します。乳腺は左側に4個、右側に4個の合計8個あります。全ての乳腺を確認しましょう。
また、リンパ節の腫れがないかも確認します。腫瘍がどこまで広がっているか、ほかに病気が隠れていないかを確認するために全身のレントゲン検査を行います。
必要に応じてCT検査やMRI検査も行います。腫瘍により体にどのような影響が出ているかを確認するために、血液検査や尿検査、便検査は必ず行います。
猫の乳腺腫瘍の治療法とは?
乳腺腫瘍の治療の第一選択肢は手術です。残念ながら内服薬や外用薬で治療することはできません。摘出した腫瘍は病理検査に出すことが多いのですが、悪性と診断された場合は化学療法を行うことがほとんどです。手術方法、化学療法について詳しくみていきます。
手術
治療は外科手術による切除が第1選択肢になります。猫の乳腺腫瘍はほとんどが悪性ですので、そばにある乳腺にも腫瘍が発生することが考えられます。ほかの乳腺への転移や再発のリスクを軽減する目的で、腫瘍ができた側の乳腺を全部摘出することが多くあります。
化学療法
切除した乳腺腫瘍を病理検査に出した結果、悪性の場合は化学療法が選択されることがあります。
化学治療を行うことのメリットは、全身に飛んでしまった可能性のある腫瘍細胞を死滅させることです。ほかにも病状の悪化を防ぐなどの目的のために行います。
しかし、化学療法は全身に影響を与えてしまいますので、血液検査を行い化学療法が可能かどうかを確認しながら慎重に検討する必要があります。
そのほかの治療法
猫の乳腺腫瘍は外科的に切除することが第一選択ですが、ほかの治療方法として免疫療法や鎮痛剤の投与があります。これらの方法は外科手術や抗がん剤の治療と併せて行います。
免疫療法には樹状細胞療法や活性化リンパ球療法などがあります。手術後の痛みの緩和のために鎮痛薬の投与は必須です。
猫の乳腺腫瘍の治療費用
乳腺腫瘍の治療費用の一例は以下です。地域や病院によって異なりますので、参考としてください。
・血液検査: 約12,000円
・レントゲン: 約5,000円
・手術費用(麻酔代金を含む): 約60,000円
・病理検査: 10,000円
・入院: 1日4,000円
・注射: 1日2,000円
・処方: 2,000円
その他諸費用が必要な場合があります。
乳腺腫瘍は治る?余命はどれくらい?
乳腺腫瘍はサイズが小さいうちに見つけて手術を行うことが大切です。悪性の場合は、リンパ節への転移がなく腫瘍の直径が2㎝より小さい場合は治療後の経過が良いとされています。
しかし、それでも平均の生存期間は約30か月ともいわれています。リンパ節への転移がなくても直径が2㎝以上になると治療経過が良くなく、リンパ節への転移があれば生存期間は9か月と短くなります。
生存期間に大きな差が出ますので、猫の乳腺腫瘍は早期発見、早期治療が大切です。
腫瘍が1か所にできるだけではなく、ほかの乳腺に同時にできる場合が多いため、よく見てあげることが必要です。
猫の乳腺腫瘍の予防法はある?
80%が悪性である猫の乳腺腫瘍。見つけた時の大きさによって生存期間が左右されることはお話ししましたが、予防方法はないのでしょうか?
避妊手術
避妊手術は、乳腺腫瘍の発生率を低くするという報告があります。手術を行うおおよその年齢別の発生率は以下です。
・6か月齢以前: 5%以下
・7~12か月齢: 14%
・13~24か月齢: 90%
・24か月齢以降: 予防効果なし
6か月になればできるだけ早く避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率はかなり下がります。
体を触って定期チェック
乳腺腫瘍は早期発見、早期治療が大切ですが、早く見つけるためにはご家庭でのスキンシップを行うことが一番です。日ごろからスキンシップを心がけ、気になるしこりを見つけたら早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。
まだしこりが小さいから、大きさがあまり変わらないからと様子を見ることはやめましょう。小さいうちに治療することが最も大切です。
まとめ
最後にこの記事のポイントをまとめておきましょう。
・猫の乳腺腫瘍の80%以上は悪性腫瘍です
・腫瘍が小さいうちに治療を行いましょう
・治療は手術が第1選択です
・避妊手術を6か月ごろに行うことで予防できます
猫の乳腺腫瘍は予防することが最も大切です。悪性の場合は治療を行っても残念ながら平均生存期間があまり長くないこともあります。日ごろのスキンシップを心がけ、気になることは早めに相談するようにしましょう。
※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
ペット保険に加入していなければ、全額を自己負担で支払わなければなりません。
万が一の備えとしてペット保険に加入しておくと安心です。
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