犬のケンネルコフとは

「子犬がケンネルコフになったら、どれくらいで治るの?」

ずっと咳が出ている子犬の姿を見るのは辛く、多くの飼い主さまは早く治ってほしいという気持ちになることでしょう。

そこでこの記事では、以下のことについて解説します。

  • 犬のケンネルコフとは
  • 犬のケンネルコフの症状や原因
  • 犬のケンネルコフの治療法や完治までの期間

愛犬がケンネルコフと診断された飼い主さまはもちろん、ドッグランやペットホテルなど多くの犬が集まる施設をよく利用される方もぜひ最後までご覧ください。

 

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目次

犬のケンネルコフについて

犬のケンネルコフとは、主にの症状があらわれる呼吸器の病気です。ウイルスや細菌に感染することで引き起こされます。

 

免疫力が弱い子犬が感染しやすく、免疫力を低下させる「ストレス」もケンネルコフの原因の1つといえるでしょう。合併症を起こさなければ1〜2週間で治ることも多いのですが、合併症によって重症化すると、命にかかわることもある恐ろしい病気です。

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犬のケンネルコフの潜伏期間は?

犬のケンネルコフは、感染してから3日〜7日ほど潜伏期間があります。このため、ペットショップから子犬を迎えたときやペットホテルから連れて帰ってすぐは、症状があらわれないことがほとんどです。

しかし、潜伏期間を過ぎると、次の章で紹介するさまざまな症状がみられるようになります。

犬のケンネルコフの症状

犬のケンネルコフの症状

犬のケンネルコフでは、人間でいう風邪のような症状がみられます。具体的には、以下の通りです。

  • 乾いた咳
  • えずき
  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 発熱

軽度であれば、上記の症状がみられても食欲があり元気そうにみえることが多く、様子をみてしまいがちです。しかし、治療せずに放置すれば、気づかぬうちに病気が進行してしまうかもしれません。

重症化すると何度も咳を繰り返し、元気や食欲が低下します。さらには、気管支炎肺炎などの合併症を起こすおそれもあるため、早期発見・早期治療が重要です。

犬のケンネルコフによる死亡例はある?

犬は、ケンネルコフによって死亡する可能性があります。特に、免疫力が低下した子犬やもともと呼吸器系の疾患をかかえている犬は、重症化しやすいため要注意です。

上記の症状がみられたら、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

犬のケンネルコフの原因となる病原体

ケンネルコフの原因となる病原体は、次の通りです。

  • 犬アデノウイルス2型
  • 犬パラインフルエンザウイルス
  • 犬ヘルペスウイルス
  • 犬レオウイルス
  • 犬ジステンパーウイルス
  • ボルデテラ・ブロンキセプティカ(気管支敗血症菌)
  • マイコプラズマ

上記の細菌やウイルスのうち、1種類のみ感染するケースもあれば、複数に感染することもあります。

ちなみに、ストレスによって犬の免疫力が下がると、病原体に感染しやすくなるため注意してください。

犬のケンネルコフの感染経路

ケンネルコフの感染経路

ケンネルコフの主な感染経路は、感染した犬の咳やくしゃみからの飛沫感染接触感染です。そんなケンネルコフは感染力が強く、ブリーダーやペットショップなど多くの犬が集まる場所で発生・流行しやすいのが特徴です。

ある統計調査では、ペットショップから迎えた犬の30日以内の通院理由として、ケンネルコフが「発咳」「軟便・下痢」に次いで3番目に多いという結果も報告されています。

ブリーダーやペットショップから子犬を迎えて数日の間は、ケンネルコフの症状がみられないか注意して観察すると良いでしょう。

参照:アニコム「どうぶつの疾患統計」

子犬はケンネルコフになりやすい?

ケンネルコフは、ある特定の犬種で発症しやすいということはありません。ですが、免疫力が低い生後6週〜6か月齢の子犬は、免疫力が低いために発症しやすいといえます。

そのため、年とともに免疫力が低下するシニア犬が、ケンネルコフを発症することもあります。

 

また、健康な成犬がケンネルコフになるのはまれですが、強いストレスによって免疫力が低下すると、成犬であっても発症する可能性があるため注意してください。

病院に連れて行くべきタイミングは?

食欲や元気がない犬

上記でも紹介したとおり、ケンネルコフは軽度であれば自然に治る場合もあります。しかし、重症化すると、命にかかわる恐ろしい病気であることも忘れてはいけません。

できれば上記の症状がみられた段階で、病院を受診することをおすすめします。とはいえ、たまに咳をするくらいであれば、様子を見るという飼い主さまも多いかもしれません。

その場合でも、以下の症状がみられたときには、すぐに病院に連れて行く準備をしておいてください。

  • 呼吸が荒い
  • 数日間咳が続く
  • 元気や食欲がない

ケンネルコフの検査や診断方法

軽度の場合、血液検査や胸部レントゲン検査を行っても大きな異常が認められないことがほとんどです。そのため、原因となっているウイルスや細菌を特定するのは難しいとされています。

 

なかには、原因を確定するために遺伝子検査を実施している病院もありますが、多くは臨床症状とともに以下のようなポイントをふまえて総合的に診断します。

  • 年齢
  • ワクチン接種の有無
  • 感染した犬との接触の有無
  • 過去や現在の飼育環境

ただし、重症化している場合は、必要に応じてさまざまな検査が行われます。

ケンネルコフの治療法とは?どれくらいで治る?

ケンネルコフの代表的な治療法は、投薬です。症状に合わせて、以下の薬が処方されます。

  • 抗生剤
  • 気管支拡張薬
  • 咳止め薬

一方、重症化していれば、入院が必要な場合もあるでしょう。特に肺炎を併発している場合は、酸素吸入ネブライザー療法などが行われます。

 

軽症の場合は1〜2週間程度で治ることが多いのですが、ほかの病気を併発している場合はもう少し治療期間が長くなることもあるでしょう。

ケンネルコフの治療費用

ケンネルコフの治療費は、検査の内容や動物病院によって差があります。とはいえ、1回の通院でかかる治療費の目安としては、検査代や薬代も含めて1万円程度です。

 

ケンネルコフは、一般的に高額な治療費がかかる外科手術を必要とする病気ではありません。ただ、入院が必要な場合の治療費は、ある程度高くなります。

 

「治療費が払えない」という理由で、病院に行くのをためらうことがないよう、子犬でも家族に迎え入れてすぐにペット保険に加入しておくと安心です。

以下の記事におすすめのペット保険をまとめていますのでぜひご覧ください。

ほかの犬にうつさないように注意!

ケンネルコフの対策

上記で紹介したとおり、ケンネルコフは感染力が高い疾患です。そのため、ほかの犬に移さないためには、感染した犬をほかの犬と接触させないようにする必要があります。

特に同居犬がいる場合は、以下のことに注意しましょう。

  • 水や食器は感染した犬と別のものを使わせる
  • 食器やケージをしっかりと消毒する
  • 完全に治るまで安静にさせる

犬のケンネルコフが、人にうつることはありません。しかし、病原体がついた手でほかの犬を触ることで感染させるおそれはあります。

犬のお世話をした後は、しっかり手を洗ってください。

飼い主がやっておくべき対処法

愛犬にケンネルコフの症状がみられたら、動物病院を受診する前に、まずは愛犬が咳をしている動画を撮ることをおすすめします。それを獣医師が見ることで、より正確な診断の助けになるはずです。

 

治療中は、愛犬の免疫力を上げる工夫をしましょう。たとえば、栄養管理の徹底やストレスをかけない環境作りなどがあります。また、部屋の掃除や消毒によって、病原体を除去することも重要です。

ケンネルコフを早く治す、または重症化させないためにも、これらの対処法を実践してみてください。

犬のケンネルコフの予防法はある?

ここまでは、ケンネルコフを発症した場合の対処法について解説してきましたが、できればあらかじめ予防したいですよね?

犬がケンネルコフにかからないようにするためには、以下の予防法を実践しましょう。

 

ワクチン接種

5種以上のワクチンを接種すれば、ケンネルコフの原因となる以下の3つを予防できます。

  • 犬アデノウイルス2型
  • 犬パラインフルエンザウイルス
  • 犬ジステンパーウイルス

ワクチンによって100%予防できるわけではありませんが、重症化のリスクを低下させることは可能です。

 

毎日の健康管理

ワクチンを接種する前に、ほかの犬との接触を避けるのはもちろんですが、毎日の健康管理も重要です。特に体調が変化しやすい子犬に異変がないか、よく観察しましょう。

また、免疫力を下げないためにも、栄養バランスのある食事を与え、不要なストレスはかけないようにしてください。

ケンネルコフ以外の「咳」が出る病気

ケンネルコフのように咳の症状が出る病気は、ほかにもいくつかあります。

この章では、ケンネルコフ以外の咳が出る病気について見ていきましょう。

 

心臓病

中高齢の小型犬で咳がみられた場合は、心臓病の疑いがあります。なかでも、犬の場合は僧帽弁閉鎖不全症が多く、心臓が大きくなり気管支を圧迫することで咳が出るようになるのです。

咳以外にも「運動を嫌がるようになる」「寝る時間が増える」といった症状がみられます。

 

気管虚脱

小型犬で咳がみられた場合は、気管虚脱かもしれません。気管が弱くなり気管本来の形が保てなくなると呼吸困難を引き起こし、咳が出ます。

ほかにも、「ガーガーと苦しそうに呼吸する」「舌が真っ青になる」といった症状がみられるのが特徴です。

 

喘息

呼吸器系のアレルギーがある犬が咳をした場合は、喘息の疑いがあります。気管に炎症が起こることで、咳や呼吸困難などの症状があらわれます。

原因は、タバコの煙や化学薬品、ストレスなどさまざまです。

 

フィラリア症

フィラリア症は、蚊によってフィラリアが犬の心臓や肺に寄生することで咳の症状があらわれます。

薬でほぼ100%予防できますが、フィラリア予防薬を投与していない犬や、投与期間が短い場合、確実に投与できていない場合は、フィラリアに感染している可能性が高くなります。

 

誤嚥

食道を通るべき食べ物や水分が、誤って気管に入ることで咳が出る場合もあります。軽度の誤嚥であれば咳をすれば治りますが、飲みこんだものが気管に詰まったり、誤嚥性肺炎になったりすると危険です。

まとめ

この記事では、犬のケンネルコフについて解説しました。

最後にこの記事のポイントをまとめると、以下の通りです。

  • 犬のケンネルコフは感染力が強い
  • 特に免疫力の低い子犬はケンネルコフに注意
  • 軽度であれば1~2週間で治る

子犬を家族に迎えた嬉しさから構いすぎてしまうと、ストレスになりケンネルコフを発症してしまうかもしれません。最初はほどよい距離感を保ちつつ、ワクチンや毎日の健康管理も徹底してください。

それでも、上記で紹介した症状がみられた場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

 

※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
ペット保険に加入していなければ、全額を自己負担で支払わなければなりません。
万が一の備えとしてペット保険に加入しておくと安心です。
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獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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