犬の目やに

愛犬の目やにが多くなった、涙の量が増えた、目が充血しているなど、
犬の目について気になっていることはありませんか?
目やにがあること自体は問題がありませんが、量が多い場合は病気の可能性もあります。
この記事では、目やにの原因、動物病院での診療内容などについて、獣医師の平松育子先生監修のもと解説します。

目次

犬の目やにの原因とは何か?

―犬の目やにの原因、理由について教えてください。

生理現象

目やには、目から排出された老廃物です。目やにの中には、目に入ったごみや古い細胞などが含まれています。特に病気でなくとも、正常な生理現象として排出されます。目やにが付いたまま放置すると、目やにが黒く固まってしまう場合があります。

このほか病気を原因として、犬の目やにが多くなる場合があります。

犬の目やにで疑われる病気について

―犬の目やにが多くなる病気として、どのようなものが考えられますか?

角膜炎・角膜潰瘍(かくまくかいよう)

角膜炎は、目の表面にある角膜に炎症が起きている状態です。犬の目に異物が入ったり、目をこすったりすると角膜に傷が付き、そこに細菌のような病原体が入り込み、発症します。発症すると、目の充血や、涙が多くなるなどの症状が見られる場合があります。

角膜炎が悪化したり、角膜に傷が付いたりすると、角膜潰瘍を発症するおそれがあります。角膜潰瘍は角膜に穴が開いてしまう病気で、主な原因は、角膜の傷に入り込んだ細菌が、角膜細胞に炎症を引き起こすことです。角膜潰瘍の症状は、目やにのほか、目の充血や目の痛みなどが挙げられます。角膜潰瘍は、傷の深さによって表在性角膜潰瘍と深部角膜潰瘍に分けられ、深部角膜潰瘍のほうが重篤です。

結膜炎

結膜炎は、まぶたの裏にある結膜という粘膜に、炎症を起こしている状態です。症状は、目やにのほか、目のかゆみなどが挙げられます。結膜炎はその原因により、アレルギー性結膜炎や感染性結膜炎、濾胞性結膜炎(ろほうせいけつまくえん)などに分けられます。

ドライアイ

ドライアイは、涙の量が不足したり、涙の成分が変化することで、目の表面に障害を起こす病気です。犬のドライアイには、次のような症状が見られます。

  • 目をこする
  • 目やにが出る
  • 目の充血
  • 目がしょぼしょぼする
  • 涙が多いなど

流涙症

流涙症は、涙が過剰に分泌される病気です。犬が流涙症を発症すると、目やにや涙やけなどの症状が見られます。流涙症の原因は、異物を始めとする目への刺激によって涙の分泌が多くなる場合、涙の排出障害が起こる場合などが考えられます。

涙の排出障害の多くは、鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)という状態で起こります。鼻涙管は涙が鼻に排出されるための通路です。これが先天的に一部欠損している場合や、後天的に炎症や外傷により塞がれると鼻涙管閉塞が起こります。基本的には、それほど健康上の問題はありませんが、涙やけにより犬が皮膚病を起こす場合や、涙やけが気になる場合は治療が必要です。

まつ毛の異常

犬のまつ毛が異常な生え方をしていて、目に接触してしまっていると、涙が多く分泌され、目やにが多くなる場合があります。このようなまつ毛を異所性睫毛(いしょせいしょうもう)と呼びます。

アレルギー

食物アレルギーを始めアレルギーによっても結膜炎を起こし、それにより目やにが生じる可能性があります。比較的多いアレルギーの原因は、花粉、ハウスダスト、食べ物です。

犬の目やにで気になる症状と動物病院に連れて行くタイミング

―動物病院を受診すべきタイミングについて教えてください。

犬に次のような症状が見られたら、早めに動物病院に行きましょう。

  • 目やにがひどい
  • 涙の量が多い
  • 涙やけがひどい
  • 目が充血している

・目の表面に傷がある

次に挙げる症状は、角膜潰瘍を起こしている可能性が非常に高いと考えられます。点眼薬を始め集中的な治療が必要なため、すぐに動物病院を受診しましょう。治療が遅れると、失明してしまうことがあります。

・目の表面に穴が開いている

犬の目やにが増えた場合の家庭内での対処

犬の目やに 家庭での対処

―犬に目やにが付いていたら、家庭でどのように対処すればいいのでしょうか?

犬に目やにが付いている場合は、ガーゼのようなやわらかい布で拭き取るといいでしょう。そのまま放置すると、目やにが黒く固まって、取り除くのが難しくなってしまうおそれがあります。目やにが固まり、拭いてもなかなか取り除けない場合は、ノミ取り用のくしを使うと効率よく取り除けます。また、市販の目やに専用のくしを使うのもいいでしょう。

犬が目やにに加えて涙の量が多く、涙やけを起こしている場合は、涙を定期的に拭き取り、涙やけを取り除く専用の目薬を使うといいでしょう。涙やけ用の目薬は、動物病院で処方してもらえます。

また、犬が結膜炎を起こしていたり、角膜に傷ができたりしている場合は、自宅で対処できることは特にないため、なるべく早く動物病院を受診しましょう。受診する際には、いつから、どのような症状が見られているか、心当たりがあることなどをメモしおくといいでしょう。問診がスムーズに進みます。

犬の目やにの診療内容とかかる治療費

犬の目やに 治療費

犬の目やにの診療内容

犬に目やにが多い、動物病院を受診すると、簡単な身体検査の後に、専用の機器を使った検査を行う場合があります。スリットランプという機器は、目を拡大して傷の有無やそのほかの症状を確認します。また、フローレス検査という検査では、目の表面に色を付ける検査です。角膜に傷があれば、その部分だけ染色されます。

ひと通りの検査の後、診断結果に合わせて治療を行います。

結膜炎や角膜炎などの場合

多くは、点眼薬による治療を行います。角膜潰瘍にまで発展すると、外科手術や1週間程度の入院が必要になる場合があります。コンタクトレンズを装着する場合もあります。外科手術では、目の瞬膜や結膜と呼ばれる部分を角膜にかぶせるように縫い付けて傷を保護したり、まぶたを開かないようにして目を保護したりします。手術後も集中的な点眼が必要なため、たいてい入院を勧められます。

犬の目やにの治療費例

ここでは、一時的な結膜炎を例として、犬の目やにの治療費を紹介します。

  • 治療期間:1週間
  • 通院日数:2日
  • 入院日数:0日
  • 手術回数:0回
  • 治療費 :3,000円

※上記の診察内容や期間、治療費は、小型犬を基にした一例であり、全国の平均や水準を示すものではありません。また、体格や病状、動物病院によって異なりますのでご了承ください。

獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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