犬の血尿の原因と対処法

愛犬に血尿の症状がみられたら飼い主さまは心配になるでしょう。
なぜ血尿をしているのか、どうすれば治るのか、早急に調べる必要があります。
この記事では、犬の血尿の理由や原因、考えられる病気、動物病院へ連れて行くタイミング、病院での診療内容などを獣医師の平松育子先生監修のもと解説します。

目次

犬の血尿の原因とは何か?

犬の血尿の原因とは

―犬の血尿の原因、理由について教えてください。

メス犬の発情出血

避妊手術をしていないメス犬では、発情(ヒート)中の出血によって尿に血液が混ざり、血尿のように見える場合があります。発情による出血は生理現象のため、特に治療の必要はありません。

メス犬はだいたい5〜12か月齢ごろに性成熟を迎えます。性成熟後は発情が年に1〜2回起こり、発情中は陰部からの出血が2週間ほど続きます。出血が気になる場合は犬にオムツをしておくと、床などを汚さずに済みます。

上記以外にも、病気によって犬に血尿が見られる場合があります。

犬の血尿のときに疑われる病気について

―犬の血尿の原因として考えられる病気について教えてください。

子宮蓄膿症

避妊手術をしていなメス犬の場合、子宮蓄膿症を患うと陰部から血の混じった膿(うみ)が排出され、尿に血が混ざっているように見える場合があります。子宮蓄膿症は子宮に膿がたまる病気で、おおよそ6歳齢以上のメス犬で、発情後2か月ごろによく見られます。また、一度も出産を経験していないメス犬や、しばらく繁殖を休止しているメス犬にも多く見られます。

子宮蓄膿症の症状は、以下のようなものが挙げられます。

  • 食欲不振
  • 多飲・多尿
  • 腹部膨満
  • 外陰部の腫大
  • 陰部からの排膿

治療しないでそのままにしておくと、腎不全や敗血症、子宮の破裂などを引き起こして死んでしまうおそれがあるため、早期発見・早期治療が重要です。

膀胱炎

膀胱炎によっても血尿が生じる場合があります。犬の膀胱炎は細菌感染によるものが多く、特に尿道がオス犬と比べて短いメス犬に多い傾向があります。症状は、血尿や少量・頻回の排尿が多く見られます。治療せずに放っておくと、腎炎の原因になってしまうため、早めの治療が必要な病気です。

尿石症

尿石症は尿路に結石が形成され、その結石により粘膜の炎症や尿路閉塞を起こす病気です。犬の尿石症では、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石という結石が多く見られます。

ストルバイト結石は、尿がアルカリ性に傾いている場合に形成されます。ストルバイト結石は細菌感染との関連が強く、膀胱炎のような尿路感染症を起こしている犬で多く発症します。シュウ酸カルシウム結石は、尿が酸性化していると多く発生します。これらの結石が膀胱や尿道の粘膜を傷つけると炎症が起こり、血尿の原因となる可能性があります。また、尿路閉塞を起こすと、尿毒症や腎不全の原因にもなるため、注意が必要です。

膀胱腫瘍

膀胱腫瘍によっても血尿が引き起こされる可能性があります。犬の膀胱腫瘍は悪性であることが多く、中でも最も多いものが移行上皮癌です。移行上皮癌は老犬に発生することが多く、メス犬で比較的多く見られます。主な症状は、血尿のほかに、排尿困難、頻尿などです。

玉ねぎ中毒による血色素尿

犬が玉ねぎを始めとするネギ類を食べると、これらの食物に含まれるチオ硫酸化合物や硫化アリルによって赤血球が障害されて溶血します。大量の赤血球が破壊されると、貧血や色素が尿中に排出され、尿が赤くなり、血尿のように見える場合があります。

犬の血尿で気になる症状と動物病院に連れて行くタイミング

家庭内で様子を見ようとせず、すぐ病院へ

―動物病院を受診すべきタイミングについて教えてください。

犬に次のような症状が見られたら、早めに動物病院を受診してください。メス犬の発情期の出血以外に、様子を見ていて構わない症状はありません。

  • 尿が赤い
  • 尿に血が混ざっている
  • 陰部から膿が出ている
  • 陰部が腫れている
  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 多飲多尿
  • お腹が張っている
  • 頻尿
  • 尿が出にくい
  • 目や口の粘膜が白い

犬の血尿の診療内容とかかる治療費

犬の血尿の診療内容とかかる治療費

犬の血尿の原因として考えられる病気の診療内容

子宮蓄膿症が疑われる場合

エコーやレントゲンにより、犬の子宮の腫大(しゅだい:身体組織や期間が腫れ上がること)を確認します。また、犬の全身状態を確認するために血液検査を行う場合もあります。

子宮蓄膿症の治療は、外科手術による卵巣・子宮の摘出です。手術後は1週間程度の入院が必要です。入院中は点滴や抗生剤の投与などを行います。高齢の場合や基礎疾患により全身麻酔下での処置が難しい場合は、抗生物質やホルモン剤によって内科的に診ていく可能性もありますが、根治は望めません。そのため、敗血症を引き起こすリスクが高くなります。

膀胱炎、尿石症、膀胱腫瘍などが疑われる場合は、尿検査やエコー検査を行い、結石や尿潜血、膀胱粘膜の腫れ、腫瘍の有無などを確認します。

膀胱炎の場合

犬の膀胱炎は、膀胱の腫れを抑える薬や抗生剤を用いて治療を行います。内服薬を2週間程度継続し、症状がなくなれば治療は終了です。

尿石症の場合

尿検査で犬に尿結石が確認された場合、エコーやレントゲンで尿路に結石が確認された場合には、尿石症として治療を行います。尿石症で細菌感染の併発が疑われれば、抗生物質で治療します。尿石症では食生活が発症に強く関連しているため、食事療法が必要です。食事療法は基本的に一生涯にわたって続けなければならず、療法食以外のものは一切与えてはいけません。食事療法によって結石が溶けない場合や、結石が尿路を閉塞してしまっている場合は全身麻酔下での処置が必要です。結石が膀胱に止まっている場合は腹部を切開し、膀胱から直接結石を取り除きます。結石が尿道に詰まっている場合は、尿道口からカテーテルを挿入し、導尿処置を行います。

膀胱腫瘍の場合

膀胱腫瘍は、外科的な減量手術や放射線療法、化学療法を行う場合があります。しかし、完全に腫瘍を取り除くことは難しく、いずれ尿路を閉塞してしまう可能性が多くあります。

犬の血尿の治療費例

ここでは、膀胱炎を例に、犬の血尿の治療費を紹介します。

  • 治療期間:2週間
  • 通院日数:3日
  • 入院日数:0日
  • 手術回数:0回
  • 治療費 :1万円

※上記の診察内容や期間、治療費は、小型犬を基にした一例であり、全国の平均や水準を示すものではありません。また、体格や病状、動物病院によって異なりますのでご了承ください。

獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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