犬の下痢の診療内容とかかる治療費

愛犬が下痢をしていて心配になったことはないでしょうか?
この記事では犬が下痢になる原因や、下痢の症状から疑われる病気、家庭内での対処方法や動物病院での診療内容などについて、獣医師の平松 育子先生監修のもと解説します。

目次

犬の下痢の原因とは何か?

―犬が下痢になる原因について教えてください。

食事

食事内容によっては、犬に下痢を引き起こしてしまう場合があります。その原因は、食物アレルギーや食事の急な変化、食中毒、ドッグフードが古い、愛犬の体質に合わないなどが考えられます。食事を変える場合は、数日間かけて徐々に新しいものの割合を増やしましょう。

ストレス

ストレスによっても下痢を起こす場合があります。その原因の多くは、引っ越しのような急な環境の変化が挙げられます。特に子犬は環境の変化に敏感なため注意が必要です。

異物誤飲・誤食

異物を誤って食べてしまい、腸に詰まっている場合も下痢の原因となります。また、薬物を食べてしまうと中毒を起こし、それが原因で下痢を起こす場合もあります。

感染症

細菌やウイルス、寄生虫などによる感染も下痢の原因となります。これは、多頭飼いによく見られます。多くは一過性で、治療により良くなりますが、治療せずに放置すると重症化や慢性化のおそれがあります。
≪そのほかの病気≫
腫瘍やリンパ管拡張症、膵臓の病気によっても犬が下痢を起こします。腫瘍は老犬に多い病気であり、老犬で下痢が続く場合は精密検査が必要です。

犬の下痢で疑われる病気について

―犬が下痢になったら、どのような病気が考えられますか?

感染性腸炎

感染性腸炎は、サルモネラやカンピロバクター、クロストリジウムなどの細菌、犬パルボウイルスや犬コロナウイルスなどのウイルス、犬回虫や犬条虫、ジアルジアなどの寄生虫が原因となって発症します。
多くは急性の下痢や血便を示し、抗生剤や駆虫薬などによる治療でたいてい良くなりますが、慢性化の可能性や、子犬・老犬では重症化のおそれもあります。
小腸性下痢の場合は1回の排便量が多く、回数は少なくなります。大腸性下痢の場合は1回の排便量は少なく、回数が多くなります。小腸内で出血が起きている場合は黒っぽいコールタールのような便になり、大腸からの出血の場合は潜血が便の表面に付着します。犬パルボウイルスや犬コロナウイルスによる腸炎は、毎年の混合ワクチンの接種で予防できますので必ず毎年接種してください。

腫瘍

リンパ腫や腸腺癌などの腫瘍によっても、下痢を生じる可能性があります。高齢で下痢が長く続く場合は、腫瘍を疑って精密検査を受けたほうがいいでしょう。治療としては、対症療法や外科手術、抗がん剤療法などが考えられます。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患は、小腸や大腸の炎症により、下痢や嘔吐を引き起こす原因不明の疾患です。犬の慢性的な下痢の多くは、この病気に起因します。また、この病気は根治が難しいため、ステロイドのような免疫抑制剤を使って症状を抑えながら、ずっと病気と付き合っていくようになることがほとんどです

腸リンパ管拡張症

腸リンパ管拡張症は、何らかの原因でリンパ管の通過障害が生じ、たんぱく質などのリンパ管の内容物が腸に漏れ出て、小腸性下痢や軟便、腹水などを引き起こします。腸の炎症を抑えるためにステロイドなどの抗炎症薬の投与、高たんぱく・低脂肪食といった食事療法が必要になります。

膵外分泌不全

膵臓から必要な消化酵素が分泌されなくなり、消化不良を起こす病気です。食欲旺盛にもかかわらず瘦せ衰え、過剰に食事を要求します。通常よりもかなり柔らかく、油粘土のようにべたべたした、黄土色の便をします。回数も多く、1回の量も多いのが特徴です。低脂肪食などの食事療法を必ず行い、消化酵素の投与が生涯必要です。

犬の下痢で気になる症状と動物病院に連れて行くタイミング

犬の下痢で気になる症状と動物病院に連れて行くタイミング

―動物病院を受診すべきタイミングについて教えてください。

犬に次のような症状が見られたら、すぐに動物病院に行きましょう。

  • 下痢や嘔吐が続く
  • 食欲がない
  • 元気がない
  • 黒い血便
  • ゼリー状の血便
  • 脱水が見られる

犬の下痢の家庭内での対処

犬に下痢が続くようなら自宅で対処しようとせず、すぐ病院へ

―自宅ではどのように対処すればいいのでしょうか?

家庭内で対処できることはありません。すぐに動物病院を受診しましょう。ビオフェルミンやヨーグルトの整腸作用が下痢に効く場合もありますが、病気によっては効果がなく、しかも即効性のあるものではありません。

これら人間用の整腸剤を数日試している間に悪化する可能性もあるため、家庭内で対処しようとせず、動物病院を受診してください。受診の際は、必ず新鮮な便を持参しましょう。これは糞便検査を実施するためです。また、いつから、どのくらいの頻度で下痢が続いているのかをメモしておくと、問診がスムーズに進みます。

犬の下痢の診療内容とかかる治療費

犬の下痢 治療費

犬の下痢の診療内容

まずは犬の身体検査と糞便検査を行い、原因や状態に応じて以下のような治療を実施します。

寄生虫が原因の場合

糞便検査によって、すぐに原因がわかる場合があります。寄生虫が発見されると、すぐに駆虫薬による治療を行います。

一過性の下痢の場合

身体検査や糞便検査で異常が認められず、経過が短い場合は一過性の下痢として治療を行います。

脱水が見られる場合

点滴により水分を補い、整腸剤が処方されます。

身体検査で異常が認められた場合や経過が長い場合

血液検査やレントゲン検査、エコー検査などが勧められます。原因が特定されると、それに合わせて治療を進めます。入院や手術が必要になる場合もあります。

犬の下痢の治療費例

ここでは、犬の下痢の治療費について一過性の下痢を例に紹介します。

  • 治療期間:1週間
  • 通院日数:2日
  • 入院日数:0日
  • 手術回数:0回
  • 治療費 :5,000円

※上記の診察内容や期間、治療費は、小型犬を基にした一例であり、全国の平均や水準を示すものではありません。また、体格や病状、動物病院によって異なりますのでご了承ください。

獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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