犬の脳の病気

脳の病気はさまざま

脳の病気と聞いてどんなことを思い浮かべますか?「脳」がつく人の病気の名前では、「脳卒中」や「脳腫瘍」などが思い浮かぶかもしれませんね。「脳卒中」や「脳腫瘍」は犬でも人と同じように発生する病気です。

 

脳卒中とは、脳の血液循環の障害により、脳の一部に血液が供給されなくなり、脳梗塞の状態になることを指します。一方、脳腫瘍では、脳の一部に腫瘍ができて、脳神経の働きを阻害し、発作、運動機能の異常、性格の変化などの症状を引き起こします。

 

このように、一口に脳の病気と言っても、その原因はさまざまです。脳(神経)の病気をその原因から分類する「DAMNIT-V」という疾患分類法が知られています。この記事では、DAMNIT-Vの分類ごとに、主な疾患を紹介していきます。

 

【ペット保険比較のピクシー】では人気ペット保険おすすめランキングもご紹介しております。
まだペット保険に加入していない方、これから加入する方、保険の乗り換えを検討中の方は参考にされてください。

目次

認知症

(D)変性性疾患(Degenerative diseases)

 

変性性疾患とは、脳組織の組織や脳細胞が死滅することによって、脳機能の変化が起こる疾患を指します。犬の認知症(認知機能不全症候群)は、加齢に伴い発症する疾患で、脳全体が萎縮する変性性疾患の一つです。

 

犬の認知症では、

①見当識障害(家や庭で迷う など)

②人あるいは他の動物との関わり合いの変化(家族や同居動物への無関心 など)

③睡眠と覚醒の周期の変化(昼夜逆転し夜中に起きてしまう など)

④トイレのしつけや以前に覚えた学習を忘れる

⑤活動性の変化あるいは不活化

⑥不安感の増大

という6つの徴候(DISHAAの6徴候)が表れることが特徴的です。

 

進行性の疾患であり、治療により治癒することはありませんが、予防により進行を遅らせることができます。DISHAAの6徴候に関連するような変化がみられたら、早めに獣医師に相談するようにしましょう。

ペット保険比較のピクシーにはペット保険についての記事も多数ございますので、安心して保険をお選びいただけます。
保険選びで迷われている方は、保険料補償割合などの条件を一括比較できる「人気ペット保険おすすめランキング」も参考にされてください。

水頭症

(A)奇形性疾患(Anomalous diseases)

 

奇形性疾患とは、先天性の脳の構造異常による疾患のことで、水頭症はその代表例です。水頭症は、脳の周囲に満たされている透明内液体である脳脊髄液の循環異常により、脳室と呼ばれる空間に脳脊髄液が溜まることで、さまざまな症状を引き起こします。

 

症状は障害を受ける脳の部位によってさまざまですが、意識障害、行動異常、旋回、てんかん発作などがみられることがあります。

 

水頭症はチワワ、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、パグ、ペキニーズ、マルチーズ、ポメラニアンなどの小型犬で発生しやすい疾患です。

肝性脳症

昏睡する犬

(M)代謝性・栄養性疾患(Metabolic/nutritional diseases)

 

代謝性・栄養性疾患とは、内臓等の臓器の異常や、食事中の栄養素の欠如によって、脳の機能が障害される疾患を指します。代表例として、肝臓の機能が低下し、肝臓で代謝されるアンモニアなどの有害な物質を分解できず、脳機能が障害される肝性脳症が挙げられます。

 

犬の肝性脳症は、門脈体循環シャントによって引き起こされます。消化によって腸から栄養を吸収した血液は、門脈を通って肝臓に流れ込みます。肝臓では、栄養と一緒に吸収された毒素が分解され、解毒された血液が全身に回ります。


しかし、門脈体循環シャントでは、門脈から肝臓を経由せずに直接全身に血液が回ってしまうことで、全身に毒素がめぐり、脳機能の障害を引き起こします。

 

門脈体循環シャントによって起こる肝性脳症では、軽度の運動失調、軽度の無関心という軽度の症状から、一時的な失明や、けいれん発作、昏睡といった重度の症状まで発生することがあります。

脳腫瘍

(N)腫瘍性疾患(Neoplastic diseases)

 

腫瘍性疾患は、脳にできた腫瘍によって、脳の組織が圧迫されたり、組織が破綻することでさまざまな症状が起こります。一般に高齢犬に発症しやすく、10万頭あたり15頭ほどに発症するといわれています。主な症状として、性格の変化や運動機能の異常が挙げられます。

脳炎

ぐったりするマルチーズ

(I)炎症性疾患(Inflammatory diseases)

 

炎症性疾患は、脳に何らかの理由で炎症が生じることで起こる疾患を指します。炎症が起こる原因は感染性非感染性に分けられます。

 

感染性の脳炎としては、混合ワクチンで予防できる、犬ジステンパーウイルスや、狂犬病ウイルスによる脳炎が挙げられます。これらは、かつては多くみられましたが、近年はワクチンの普及によりほとんどみることはなくなりました。

 

非感染性の脳炎としては、免疫の異常によって引き起こされる脳炎が挙げられます。パグ、マルチーズ、ヨークシャー・テリア等で発生しやすいことが知られています。

外傷/中毒

(T)外傷性/中毒性疾患(Traumatic/Toxic diseases)

 

外傷性疾患とは、頭部の外傷によって、脳を損傷した場合に起こる、脳機能の障害を指します。外傷により脳を損傷した場合、死亡することも少なくありません。一方、一命を取り留めた場合は、後遺症は残るものの、徐々に回復していくことが多くあります。

 

中毒性疾患は、何らかの毒素を身体に取り込んでしまうことによって起こります。脳機能に影響を与える中毒として、ボツリヌス中毒、鉛中毒、有機リン中毒などが挙げられます。

脳梗塞

(V)血管障害性疾患(Vascular diseases)

 

血管障害性疾患とは、脳の血管が詰まってしまうこと(脳梗塞)や、脳の血管が破れて出血する(脳出血)ことにより起こる疾患の総称です。

 

かつては、犬においては脳梗塞は稀だと考えられてきましたが、CTやMRIが日常的に使われるようになり、診断されることが多くなってきました。


脳梗塞が、脳のどの位置に発生するかによって、意識障害、運動失調、麻痺、旋回、眼振、失明、てんかん発作など、さまざまな症状が生じます。中〜高齢の犬に生じやすく、発症すると24〜72時間程度の悪化した後、症状の進行が止まるか、改善に向かう傾向があります。

 

※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
ペット保険に加入していなければ、全額を自己負担で支払わなければなりません。
万が一の備えとしてペット保険に加入しておくと安心です。
また保険選びで迷われている方は、ペット保険の保険料や条件を一括比較できる「人気ペット保険おすすめランキング」もご覧ください。

獣医師奥田順之先生
この記事の執筆者 奥田 順之
獣医行動診療科認定医。鹿児島大学共同獣医学部講師(動物行動学)。帝京科学大学講師(ペット共生学)。NPO法人全国動物避難所協会理事長。岐阜大学獣医学課程卒。2012年NPO法人人と動物の共生センターを設立。飼育放棄の主な原因となっている、問題行動の予防・改善を目的に、犬のしつけ教室ONELife開業、2014年ぎふ動物行動クリニック開業。動物行動学の専門家として、ペット産業の適正化に向き合う。2021年NPO法人全国動物避難所協会設立しペット防災活動にも取り組んでいる。

この情報をシェアする

【ペット保険比較】10秒でカンタン比較