犬のてんかん

愛犬が突然けいれんしたら、きっと不安になってしまうでしょう。実はその症状、「てんかん」かもしれません。

犬のてんかんは自然に治ることはなく、放置すると発作の回数が増え、脳に深刻なダメージを与えてしまいます。

「そもそもてんかんとはどんな病気なの?」
「我が子はてんかんになりやすい?」
「てんかんを発症しないための予防法はあるのか?」

などといったことが気になりますよね。

 

そこで今回は、犬のてんかんの症状や原因について紹介するとともに、発作が起きた際の対処法治療法についても解説します。

 

【ペット保険比較のピクシー】では人気ペット保険おすすめランキングもご紹介しております。
まだペット保険に加入していない方、これから加入する方、保険の乗り換えを検討中の方は参考にされてください。

目次

犬のてんかんってどんな病気なの?

犬のてんかんは、脳から発信される電気信号が乱れてしまい、何度も繰り返される全身性のけいれん意識障害などの症状を伴う脳疾患です。

 

犬のてんかんは脳の構造上に異常がない原因不明の「特発性(原発性)てんかん」と、病気や外傷などによる「二次性(症候性)てんかん」があります。

 

このようなことを聞くと、犬が突然死する、もしくは、寿命が縮むのではないかと不安になる方もいるでしょう。

病院で適切な治療を受けることで、犬の死亡リスクは避けられるので安心してくださいね。

てんかんの症状について

犬のてんかんには、主に2つの発作があります。

  1. てんかんの初期症状ともいえる部分発作
  2. 脳全体が興奮状態に陥る全般発作

具体的にどのような発作なのかを以下で解説します。

部分発作 

脳の一部が興奮状態になる部分発作は、次のような症状が犬の体に現れます。

  • 名前を呼んでも反応しない
  • 口からよだれが出て泡を吹く
  • 前足・後ろ足・顔など一部の筋肉がけいれんを起こす
  • 同じところをぐるぐる回る
  • 遠吠えのように吠える
  • そわそわして落ち着きがなくなる
  • 瞳孔が開く
  • 何もないところで噛むようなしぐさをする

上記の症状はてんかんの初期症状の可能性があるため、犬の違和感を見逃さず適切な対処を取るようにしましょう。

 

全般発作 

てんかんの全身発作は、脳全体が興奮状態になって体に以下の症状が現れます。

  • 意識障害を起こし倒れてしまう
  • 全身がビクビクとけいれんする
  • 発作による失禁・脱糞・嘔吐がみられる

発作は一時的で、通常数秒から数分で治まります。しかし、まれに5〜10分以上発作が継続することも。

てんかんの発作が長時間続くと脳が損傷され、何らかの後遺症を残し、最悪、命を落としてしまうこともあります。

全身発作が起こるようになった場合は、特に犬の様子に気を付けましょう。

てんかんになりやすい犬種について

てんかんになりやすい犬種

てんかんになりやすい犬種は以下の通りです。

  • ミニチュアダックスフンド
  • シベリアンハスキー
  • バーニーズマウンテンドッグ
  • シェットランドシープドッグ
  • ボーダーコリー
  • ジャーマンシェパード
  • プードル
  • キャバリアキングチャールズスパニエル
  • ビーグル
  • ゴールデンレトリーバー
  • ラブラドールレトリーバー

てんかんは、どんな犬でもなりうる可能性のある病気ですが、上記の犬は遺伝的にてんかんになりやすいと言われています。

犬のてんかん発作でみられる前兆

犬のてんかん発作でみられる前兆は次の通りです。

  • 目の焦点が定まっていない
  • 一時的にぼんやりしている
  • 飼い主の側から離れなくなる
  • 物陰に隠れるそぶりがみられる
  • 鼻を鳴らす
  • よだれを垂らす

これらの症状は一瞬で治まることもあれば、数日にわたって繰り返すケースもあります。

そのため、犬が体の不調を感じていてもよほどのことがない限り、飼い主は気づきにくい可能性が高いでしょう。

犬のてんかん発作後でみられる症状

犬のてんかん発作後、以下のような症状がみられます。

  • 困ったような症状をみせる
  • うろうろと歩きまわる
  • 意識がもうろうとしている
  • 攻撃的になる
  • 吠える
  • 目が一時的に見えなくなる
  • よだれをだらだらと垂らす
  • 水をたくさん飲むことがある
  • ご飯をたくさん食べることがある

てんかん発作後、何事もなかったかのように普段どおり過ごす犬もいます。ですが「元に戻ったから安心」と安直に考えず、必ず動物病院を受診してください。

愛犬が発作を起こしたときの対処法

てんかんになったときの対処法

犬がけいれんや意識障害を起こす様子を見てしまうと、頭が真っ白になってしまうかもしれません。

そのため、愛犬が発作を起こしたときの対処法として以下を紹介します。

    1. 愛犬の安全を確保する
    2. 発作中にしてはいけないこと
    3. 発作の様子を撮影・メモしておく

 

1.愛犬の安全を確保する

愛犬がてんかん発作を引き起こし、けいれんや同じところをぐるぐる歩き回るなどの症状が現れます。

その際、犬が高い場所にいたり、周りに物が散乱している部屋にいたりすると、ケガをしてしまう可能性があるでしょう。

愛犬が二次的な事故を起こす前に、犬が落ちないよう工夫する、物を片付ける、など安全を確保してあげてください。

 

2.発作中にしてはいけないこと

犬が突然発作を起こすとその様子に焦り、冷静でいられなくなると思います。さらに、てんかん発作中に無意識で、してはいけないことをしてしまう可能性もあるでしょう。

 

万が一、愛犬がてんかん発作を引き起こしたとき、以下のような行動は絶対しないでください。

  • 名前を呼び続ける
  • 抱っこする
  • 体を揺らす
  • 口に手を入れる

上記の行動は、犬の脳に新しい刺激を与えてしまい、次の発作を誘発してしまうおそれがあります。口の中に手を入れると意識がない犬に嚙まれてしまい、飼い主が大けがをする場合があります。犬が舌を噛んで亡くなる可能性は低いといわれています。口の中に手を入れないようにしてください。

心配ですが、落ち着いて様子を見ましょう。

 

3.発作の様子を撮影・メモしておく

苦しそうに見えても、犬は何が起こっているのかわかっていません。そのため、てんかん発作が起こったときに、飼い主ができることは、落ち着いて経過を観察することです。

 

愛犬が発作を起こした際、スマートフォンやビデオなどで撮影しておきましょう。

また、以下のことをメモしておくのもいいでしょう。

  • どのようにして発作が起こったのか
  • 発作のきっかけになったものはあるのか
  • 発作が起こった時間
  • どのくらい発作が続いたのか

獣医師に相談する際、どちらも発作時の状況を詳細に伝えられるのでおすすめです。

犬のてんかんの検査

犬のてんかんの検査は以下の通りです。

  • 尿検査
  • 血液検査
  • 画像検査(レントゲン・心エコー)

上記以外に、診察時に体のこわばりや、筋肉の動きについて確認します。特に何も異常が発見されなかった場合は、精密検査が必要になるでしょう。

 

精密検査

神経検査や血液検査の結果が正常値の場合、脳に損傷・腫瘍があるかどうかを調べなければなりません。

そのため、脳部CT検査やMRI検査、脳脊髄液検査などの精密検査に移行します。さらに、脳波の異常を調べるため、脳波検査を行う病院もあります。

 

脳部CT検査やMRI検査、脳脊髄液検査、脳波検査は、犬が検査中に暴れてケガをしないよう、全身麻酔をかけます。

そのため、麻酔時にリスクがある基礎疾患を持つ犬、シニア犬は、呼吸困難、血圧低下など副作用のリスクがあるでしょう。

麻酔のリスクが気になる方は、かかりつけの獣医師としっかり相談して納得した上で精密検査を受けてください。

 

検査費用 

犬のてんかんの検査にかかる費用を表にまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

尿検査 1,000円~2,000円程度
血液検査 4,000円~7,000円程度
画像検査(レントゲン) 10,000円~12,500円程度
画像検査(心エコー) 3,000円~5,000円程度
脳部CT検査 25,000円~40,000程度
MRI検査 50,000円以上
脳脊髄液検査 10,000円~15,000円程度

※脳波検査は対応している病院があまりないため、かかりつけの獣医師に確認してください。

犬のてんかんの治療について

てんかんは、どの犬でも発症してしまう可能性がある脳疾患です。もしも愛犬がてんかんになってしまったら、

「どのような治療法があるのか?」
「どんな薬を投与するのか?」
「そもそも、てんかんは治る病気なのか?」

など気になりますよね。

 

そこで以下では、

  • てんかんの治療内容
  • てんかん治療の目的
  • てんかんは治せるのかどうか

について解説します。

 

てんかんの治療内容 

犬がてんかんと診断されたら、投薬治療がメインになるでしょう。

原因がはっきりしない特発性てんかんの場合は、抗てんかん薬を長期的に服用し、発作を軽減・予防する薬物療法になります。

 

一方、シニア犬が多く発症する二次性てんかんは、発作の原因になっている病気を発見し、治療しなければなりません。

ただし、脳腫瘍などの疾患は治療が困難で、症状を和らげる緩和療法をとり、てんかん発作を防ぎます。

また、抗てんかん薬は肝臓に負担をかけてしまい、肝機能低下の原因になるため注意が必要です。

 

てんかん治療の目的

てんかん治療の目的は、発作の頻度を減らし、重症化しないようにコントロールすることです。

したがって、発作の回数が多くても3か月に1回程度におさえることを目標に治療を行っていきます。

 

てんかん発作のコントロールには、数年かかる場合もあり、薬の副作用があらわれないよう、投薬とあわせて定期的に血液検査することになるでしょう。

てんかん発作の回数、薬の血中濃度をみながら獣医師の判断で投薬量を決めていきます。

 

てんかんは治せる?

てんかんは一度発症してしまうと、一生付き合っていかなければならない病気です。年齢を重ねることで、症状が軽減する場合もありますが、完治はありません。

そのため「発作がおこらなくなったから完治した!」「薬の副作用が怖いから投薬をやめよう」といった自己判断はたいへん危険です。

 

投薬によって抑えられていた脳の電気信号の乱れが大きくなって脳組織が損傷し、激しい発作を引き起こしてしまう可能性もあります。

必ず獣医師に投薬や治療について相談しましょう。

 

中には複数の抗てんかん薬を投与してもコントロールが難しい難治性てんかんもあります。この場合は、専門医を受診する必要があります。早めに相談しましょう。

犬のてんかんの予防法

犬がてんかんを発症しないよう、飼い主は「てんかんにならないよう予防してあげたい」ですよね。

てんかんを発症しても「投薬以外でも、てんかん発作が起こらないよう気をつけたい」のではないでしょうか。

 

そこで以下では、

  • てんかんになる前
  • てんかんになったとき

2パターンの予防法について紹介します。

 

てんかんの予防法 

残念ながら、現代の医学ではてんかんの予防法は存在しません。

特に、特発性てんかんの場合、脳の電気信号が乱れる原因は解明されていないため、どんな犬種でも発症するリスクは同じと考えていいでしょう。

 

てんかんを発症している犬は、ストレスが引き金となって発作を起こすことがあります。

そのため、雷や花火のような大きい音やフラッシュのような強い光など、犬にとって苦手なものは避けてあげてください。

 

ひとりで留守番させない 

飼い主が出かけている最中に、てんかん発作が起こってしまうと、壁や物に頭や体をぶつけてケガをしてしまう可能性があるでしょう。

また、犬は興奮状態になると脳の電気信号が乱れやすくなります。そのため、飼い主が外出先から帰宅した際に犬が興奮して、てんかん発作を引き起こすケースも考えられます。

 

なるべく、犬が一人で留守番する環境は作らないようにしてあげましょう。

どうしても留守番をさせないといけない場合は、ペットカメラで発作時の記録を撮れるようにし、ゲージを設置して行動範囲を制限するようにしてください。

まとめ

本記事では、犬のてんかんの症状や原因、発作が起きた際の対処法や治療法について解説しました。

  • 犬のてんかんは脳障害に分類されて完治できない
  • てんかんの前兆は見落としやすい
  • けいれんや意識障害があればすぐに動物病院を受診しよう
  • 投薬量を獣医と相談し発作の回数をコントロールする

てんかんは、どんな犬種でも起こりうる病気です。そのため、犬が発作を起こしても冷静に対応すれば重症化のリスクは軽減されます。

日常生活の細かい部分まで愛犬を観察し、獣医師と相談しながら治療していきましょう。

 

※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
ペット保険に加入していなければ、全額を自己負担で支払わなければなりません。
万が一の備えとしてペット保険に加入しておくと安心です。
また保険選びで迷われている方は、保険料補償割合などの条件を一括比較できる「人気ペット保険おすすめランキング」もご覧ください。

獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

この情報をシェアする

【ペット保険比較】10秒でカンタン比較

関連記事