犬のクッシング症候群のサイン

愛犬の日常的な行動である「水を飲む」「おしっこをする」という行為の延長線上に、クッシング症候群という病気が隠れている可能性があります。

犬が、たくさん水を飲んだりたくさんおしっこをしたりするほか、震えまで起こるといったさまざまな症状を引き起こすクッシング症候群とは、どのような病気なのでしょうか。また、治療しない場合の余命はどれくらいなのでしょうか。

本記事では、犬のクッシング症候群について、以下の点を中心に解説していきます。

    • クッシング症候群とは
    • クッシング症候群の症状・末期症状・余命
    • クッシング症候群の検査・治療方法

クッシング症候群の治療に伴う処置別の費用目安も合わせて紹介しています。

愛犬に合った治療法を見定めるためにもぜひ最後までお読みください。

 

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目次

犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とはどんな病気?原因は?

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とは、内分泌疾患の1つです。副腎皮質ホルモンである「コルチゾール」が、何らかの原因によって過剰分泌されることによって引き起こされます。

コルチゾールは、糖・脂質・タンパク質の代謝や、免疫系・ストレスに作用する機能を持つホルモンです。

 

では、なぜこのコルチゾールが過剰分泌されてしまうのでしょうか。

続いては、クッシング症候群を発症する原因を解説します。

 

原因①脳下垂体に腫瘍ができる

脳下垂体(多様なホルモンを分泌する器官)に腫瘍ができ、コルチゾールの過剰分泌によって発症するのが下垂体性クッシング症候群です。いわゆる自然発生タイプのクッシング症候群であり、全体の8~9割をこの下垂体性が占めているとされています。

下垂体性クッシング症候群は、すべての犬種(主に高齢犬)に発症リスクがありますが、そのなかでもプードルやダックスフンド、ビーグルなどが好発犬種です。 発症年齢は、6歳から8歳前後と一般的な老化現象と重なる時期であり、発症初期では老化の一種だとして見過ごされる場合も少なくありません。  

 

原因②副腎にできる腫瘍

副腎性クッシング症候群は、コルチゾールを作り出す器官である副腎腫瘍ができることによって引き起こされます。副腎とは腎臓のすぐ近くにあり、生命維持のバランスを取るための機能が備わった臓器です。

この副腎に腫瘍ができると、コルチゾールが過剰分泌される原因になります。 好発犬種や発症時期は下垂体性と大差はなく、高齢化が始まった犬によくみられる、こちらも自然発生タイプといわれています。

 

原因③長期的な服薬などによるもの(医原性)

医原性クッシング症候群は、アレルギー性疾患などの治療に用いる副腎皮質ホルモン(ステロイド製剤)を長期服用することで起こる病気です。薬が原因で起こるため、すべての犬種で発症する可能性があります。

医原性クッシング症候群は、自然発生タイプで起こる症状と非常に似ているものの、病気の中身は全く異なるものです。 症状を改善させるには、原因となっているステロイドの投与を中止するか減量する必要があります。

しかし減量しすぎると、もともと低下していた副腎の機能がさらに低下するおそれがあるため、慎重に減薬を行う必要があります。

犬のクッシング症候群でみられる症状は?

犬の多飲多尿

犬のクッシング症候群においてよくみられる症状は、どのようなものがあるのでしょうか。
続いては、クッシング症候群が引き起こす症状について詳しく解説していきます。

多飲多尿が症状として最も多くみられる

クッシング症候群で1番多い症状としては、水をたくさん飲んだりおしっこをたくさんしたりする、多飲多尿が挙げられます。クッシング症候群を発症した犬のうち、実に90%以上にこの多飲多尿の症状がみられるといわれています。
夏でもないのに犬が水をよく飲む、おしっこの回数が多いなどといった症状が続く場合は注意しましょう。

犬が1日に必要とする水の量は体重1㎏あたり40~60ml

季節や運動量にもよりますが、犬が1日に必要とする水の量は体重1㎏あたりで40~60mlといわれています。
この数値は、主にドライフードを主食としている場合の目安です。ウェットフードを普段与えている場合は、直接飲む飲水量が目安量より少なくても大きな問題にはなりません。

体重1㎏あたり100mlを毎日のように超えるようになると、多飲として判断されます。

1日あたりのおしっこの量が体重1㎏あたり50ml以上なら注意!

犬が1日に排泄する尿量の目安は、体重1㎏あたり20~45mlといわれています。そのため、犬のおしっこの量が50ml以上だったり、短時間に何度もトイレに行ったりする場合は多尿と言えるでしょう。

多飲多尿の症状がある犬の尿は、通常の黄色っぽい色の尿とは異なり、無色または無色に近い薄い色になる場合があります。

 

皮膚に起こる症状

クッシング症候群は、皮膚にも異変が生じます。クッシング症候群によって引き起こされる皮膚症状は以下のとおりです。

・かゆみがなく左右対称に脱毛が起こる
・脱毛の部分にフケが発生
・皮膚が弱々しく張りがなくなる
・皮膚が黒ずむ(色素沈着)
・皮膚にできた傷口が治りにくい

また、弱くなった皮膚が薄くなることで血管が透けて見えるほか、皮膚のバリア機能が低下することによって皮膚感染症にかかりやすくなるのも、クッシング症候群における皮膚症状の特徴です。

 

その他みられる症状

多飲多尿や皮膚症状以外にみられる、クッシング症候群の症状は以下が挙げられます。

・筋力低下によって足腰が弱まり、散歩に行きたがらない
・おなかが膨れる
・呼吸が速い
・筋肉が痩せる(筋萎縮)
・よく寝るようになる
・異常な食欲増加 

先述のとおり、自然発生タイプのクッシング症候群は6~8歳ころに発症しやすい病気です。身体が衰えを感じ始める時期と重なるため、年を取ってきたと感じるだけで見過ごしてしまうことも少なくありません。

ただ、異常な食欲増加といった不自然な変化など、普段の様子と少しでも違う部分があれば、早めに動物病院を受診しましょう。

犬のクッシング症候群の末期症状について

チアノーゼによる呼吸困難は、クッシング症候群の末期にみられる症状です。血栓が肺動脈につまって肺塞栓症を引き起こします。その結果、呼吸がしづらい状況に陥り、最悪の場合そのまま命を落とすケースもあります。

食欲不振

発症初期では異常な食欲がみられ、病状が進行すると反対に食欲不振が目立つようになります。末期になると体内でさまざまな異変が生じるため、食欲がなくなる上に動きも鈍くなっていくのです。

 

震えやけいれん発作

震えとけいれん発作は、主に下垂体性のクッシング症候群にみられる症状です。下垂体にできた腫瘍が神経を圧迫し、徘徊や夜鳴き、けいれん発作などの神経症状を引き起こします。

老化による行動か、クッシング症候群の症状なのかの判断のつきにくい症状の1つです。

 

糖尿病や高血圧症などの併発

クッシング症候群の犬は、コルチゾールの過剰分泌により免疫が抑制された状態です。そのため、膀胱炎や感染性の皮膚炎をはじめ、糖尿病や高血圧症などの病気を併発しやすくなります。

さまざまな病気を発症することにより、治療方法もより複雑になってしまうのがクッシング症候群の難しさです。

犬のクッシング症候群の検査方法について

クッシング症候群の検査方法は以下のとおりです。

  • エックス線検査
  • CT・MRI検査
  • エコー検査
  • 低用量デキサメタゾン抑制試験(血液検査)
  • 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)投与による検査

クッシング症候群の診断は、いくつもの検査を組み合わせて行うのが一般的です。それぞれの検査で、体調不良の原因である疾患を絞り込んで総合的に診断します。

犬のクッシング症候群の治療方法と治療費について

犬の外科手術

クッシング症候群を発症した犬の余命の中央値は1年半ほどです。ただ、できるだけ早期に病気を発見し、治療することができれば平均寿命まで生きられる可能性もあります。

クッシング症候群の治療は、治療方法によって費用が大きく異なります。

ここでは、下記3つの治療方法の内容と、平均的な治療費について解説していきます。

  • 内服治療
  • 放射線治療
  • 外科切除

 

内服治療

【内服治療】 【平均治療費】
  • 副腎皮質ホルモンの異常分泌を抑える薬の投与
  • 副腎皮質ホルモンを分泌する細胞を壊す薬の投与
  • 診察:約1,500~2,000円
  • 検査:約1万円(血液検査など)
  • 1回分の費用:約300~600円
    (1日2回を1か月=1万8,000~3万6,000円)

 1か月の治療費目安:約2万9,500~4万8,000円

下垂体性・副腎性ともに腫瘍がまだ小さい場合は、内服薬でコルチゾールの分泌を抑制します。
完治が望める治療ではないため、薬を生涯継続して飲み続ける必要がある治療方法です。

 

放射線治療

【放射線治療】 【平均治療費】
  • 放射線で腫瘍を破壊
  • 診察:約1,500~2,000円
  • 検査:約1万円(血液検査など)
  • 放射線治療1セット(4回):約40~60万円(1か月換算約10~15万円)

1か月の治療費目安:約11万5,000~16万2,000円)

放射線治療は、体内の腫瘍に放射線を照射して腫瘍を小さくしていく治療方法です。
治療の経過が順調であれば、数か月にわたって投薬や治療がない状態で日常生活を送れます。

 

外科切除

【外科切除】 【平均治療費】
  • 下垂体性の場合は下垂体、副腎性の場合は副腎を取り出す手術
  • 診察:約1,500~2,000円
  • 検査:約1万円(血液検査など)
  • 手術:約15~25万円(腫瘍の数や部位によって異なる)

外科切除の費用目安:約16万1,500~26万2,000円

腫瘍のできた部位を切除することにより、その臓器からのホルモンは出なくなります。そのため、生涯にわたってホルモン補充を行う必要がある治療方法です。 外科切除による治療は高額な上、手術可能な病院が限られます。また、術後の生活にも注意が必要です。

まとめ

ここまで、犬のクッシング症候群について解説してきました。

  • クッシング症候群の原因は下垂体性・副腎性・医原性の3種類
  • クッシング症候群の症状は主に多飲多尿や脱毛などの皮膚症状、おなかが膨れるなど
  • クッシング症候群の末期になると、糖尿病や高血圧症など、さまざまな疾患を併発する
  • クッシング症候群の検査 治療費は治療内容によって大きく異なる 
  • クッシング症候群を発症した犬の余命は1年半ほど

クッシング症候群は一度発症すると完治は難しい病気です。ただ、愛犬の異変を素早く察知し治療を始めることができれば、苦しみやつらさを軽減させ、生活の質を落とすことなく生活できるかもしれません。

そのためにも、日ごろから愛犬とのスキンシップをかかさず、些細な変化に気付けるようにしておきましょう。

 

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獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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