「犬の子宮蓄膿症はどんな病気なの?」
「犬の子宮蓄膿症の手術費用は?」
「避妊手術とどう違うの?」
愛犬が子宮蓄膿症と診断された飼い主さまは、こんな疑問を抱えていませんか?
子宮蓄膿症の手術費用は高額になるのではないか、と不安を感じる飼い主さまも多いことでしょう。
そこでこの記事では、以下のことについて解説します。
- 犬の子宮蓄膿症の原因や症状
- 犬の子宮蓄膿症の治療費
- 犬の子宮蓄膿症の予防法
愛犬の子宮蓄膿症を治したい、もしくは子宮蓄膿症を予防したいと考えている飼い主さまは、ぜひ最後までご覧ください。
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犬の子宮蓄膿症について
犬の子宮蓄膿症は、言葉のとおり「子宮」の中に「膿」が「蓄積する」病気です。
メス犬特有の病気で、開放型と閉鎖型の2つのタイプに分けられます。
特に閉鎖型は、重症化すると命にかかわるケースもあるため、どのような病気なのかしっかり理解していきましょう。
開放型子宮蓄膿症
開放型子宮蓄膿症では、子宮頸管(子宮の出口)が開いています。子宮にたまった膿が体の外に漏れ出ることで、変な臭いがしたり、犬が気にして舐める行動がみられたりするので、閉鎖型に比べて飼い主さまが気づきやすいタイプです。
閉鎖型子宮蓄膿症
閉鎖型子宮蓄膿症では、子宮頸管が閉じています。膿が排出されず子宮にどんどんたまっていくことで、子宮が破裂する危険性があります。しかも、見た目に分かりにくく、開放型に比べて病気の発見が遅れてしまいがちです。
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犬の子宮蓄膿症の原因
犬の子宮蓄膿症は、免疫力の低下による細菌感染が原因です。この細菌感染には、以下の発情周期が関係していると考えられています。
・発情前期(約2週間)…出血がみられる時期
・発情期(約10日)…オス犬を許容し交尾をする時期
・発情休止期(約2か月)…黄体ホルモンの分泌量が増える時期
・無発情期(約4~8か月)…ホルモンの影響を受けない時期
通常、子宮には感染を防ぐ力があります。しかし発情期から「発情休止期」にかけての女性ホルモンの変化などが影響して感染への抵抗力が弱くなり、大腸菌やブドウ球菌などの細菌に感染しやすくなるのです。
犬の子宮蓄膿症にかかりやすい犬
子宮蓄膿症にかかりやすい特定の犬種はいません。しかし、以下の条件に当てはまる犬は、子宮蓄膿症を発症しやすいので注意してください。
- 避妊手術をしていない
- 出産経験がない
- 最後の出産からしばらく間があいている
- 発情してから2か月以内
ある調査では、子宮蓄膿症と診断された犬(1〜17歳)のうち10〜11歳の発症数が最も多く、5歳以上が80.2%を占めていました。
このことから、避妊手術をしていない5歳以上のメス犬と暮らしている飼い主さまは、特に注意しておくことをおすすめします。
犬の子宮蓄膿症の初期症状
初期の段階では、ほとんど症状がみられません。しかし、子宮に膿がたまってくると徐々に以下のような症状がみられるようになります。
- 元気がない
- 食欲がない
- 水をよく飲み、おしっこの量が多くなる
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
- お腹が膨らむ
- 陰部から膿が出る(開放型の場合)
特に、子宮蓄膿症にかかりやすい犬に上記のような症状がみられた場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
犬の子宮蓄膿症の膿の色や臭いは?
開放型子宮蓄膿症でみられる膿は、乳白色や黄緑色、または血のような赤褐色のドロッとした液体です。子宮蓄膿症の膿は独特の臭いがするため、たとえ犬が膿を舐めとってしまっても飼い主さまが病気に気づくポイントになるでしょう。
犬の子宮蓄膿症で気をつけたい合併症
子宮蓄膿症が進行すると、命にかかわる病気を併発する可能性があるので注意が必要です。
例えば、閉鎖型子宮蓄膿症の場合、子宮が破裂し、子宮内の細菌がお腹の中で拡散されると「腹膜炎」を引き起こします。腹膜炎は、激しい炎症を引き起こし死に至ることもある恐ろしい病気です。
また、子宮に感染した細菌が血液中に入り込み、全身に行きわたることで体中に炎症反応がみられることもあります。この状態は「敗血症」とよばれ、播種性血管内症候群(DIC)を誘発します。
DICとは、血管内に小さな血栓ができやすくなっている状態です。この血栓が細い血管に詰まると、肝臓や腎臓などの臓器に供給される血流量が減り、正常に働かなくなることで多臓器不全になることもあるのです。
子宮蓄膿症の検査や診断法
動物病院ではまず、いつからどのような症状が出ているのか、避妊の有無や発情した時期などの問診が行われるでしょう。その後、子宮蓄膿症の疑いがある場合は、以下の検査が実施されます。
身体検査
身体検査では、陰部から膿が出ていないか、お腹が膨らんでいないかを確認します。このときもし、症状を確認できたとしても、身体検査だけでは適切な診断はできません。そのため、以下の検査もあわせて行われます。
超音波検査/レントゲン検査
超音波検査やレントゲン検査では、子宮の大きさや膿の溜まり具合などを確認します。子宮の状態を把握できるので、子宮蓄膿症の診断に非常に有効です。
なお、画像だけでは子宮内に膿ではない液体が溜まる病気との区別が難しいケースもあります。
血液検査
血液検査では、白血球の数や炎症レベルの基準となるCRPの値を見て、子宮蓄膿症による炎症の程度を確認します。正常値より白血球の数が多く、CPRの値も高ければ子宮蓄膿症の可能性が高くなります。
犬の子宮蓄膿症の治療法とは?
犬の子宮蓄膿症における最も効果的な治療法は外科的治療ですが、場合によっては内科的治療が選択されます。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
内科的治療
内科的治療は、次のようなケースで選択される治療方法です。
- 軽度の子宮蓄膿症
- 腎不全や心不全で全身麻酔がかけられない
- 飼い主さまが外科的治療を希望しない
具体的には、以下の薬が使用されます。
- 細菌感染を抑制する抗生剤
- 膿の排出を促す薬
- 黄体ホルモンを抑える薬
内科的治療では、卵巣や子宮を摘出しません。そのため、治療後も妊娠が可能です。
しかし、再発する可能性が非常に高く、薬の副作用や閉鎖性子宮蓄膿症の場合は子宮が破裂する危険性があるといった問題があることも忘れてはいけません。
外科的治療
外科的治療では、黄体ホルモンを分泌する卵巣と膿が溜まっている子宮を取り除きます。手術が成功すれば多くの場合は完治し、再発せずに犬が元気に過ごせる治療法です。
ただし、持病がある場合は全身麻酔のリスクがあります。さらに、命にかかわる病気を併発している場合は回復が難しく、手術後も合併症の治療が必要になるでしょう。
獣医師からは基本的に外科的治療を提案されるでしょう。しかし、治療方針を決めるのは飼い主さまです。獣医師とよく相談したうえで、愛犬にとって最適だと思える治療を選択してください。
犬の子宮蓄膿症の手術・入院費用はどれくらい?
子宮蓄膿症の治療費は、治療法や動物病院、犬種によって大きな差があります。とはいえ、手術費用だけでみると、目安は5万円程度でそれほど高額ではありません。
ただし、重症化している場合は必要な処置(投薬や輸血)が増えますし、安全な術後管理のために入院日数も長くなります。よって、手術費だけでなく、検査や麻酔、入院費用などすべてを含めると15〜30万円近くかかるケースもあるようです。
治療費について心配な方は、事前にかかりつけの獣医師に確認してみてください。
治療費の負担を軽減するために、ペット保険に加入しておくという選択肢もあります。病気やケガを発症してからでは加入できない可能性もあるため、ペットが健康なうちに加入しておくと安心です。
犬の子宮蓄膿症の手術や入院に関するQ&A!
ここまで記事を読んで、犬の子宮蓄膿症についていくつか疑問点が浮かんだ方もいるのではないでしょうか。そこでこの章では、よくある質問にお答えします。
犬の子宮蓄膿症の手術にかかる時間は?
犬の子宮蓄膿症の手術にかかる時間は、目安として「1時間前後」です。ただし、ほかの病気を併発している場合は、より長時間の手術になるでしょう。
ちなみに、子宮蓄膿症の手術は避妊手術と同じ手順で行いますが、子宮内に膿などの液体が貯留しており、貯留の程度によっては破裂してしまったり、子宮がパンパンに膨らみ弱くなった子宮の壁に目に見えない小さな穴がすでに開いていて、術後に腹膜炎を起こす可能性もあります。避妊手術と手順は同様でも難易度は高くなります。
犬の子宮蓄膿症の手術成功率や生存率は?
子宮蓄膿症の手術による死亡率は5〜10%程度といわれています。これだけを見ると「手術をしない方が良いのか」と思われる飼い主さまもいるかもしれません。
しかし、子宮蓄膿症が自然に治ることはなく、治療しなければ死亡リスクが高まるでしょう。もし手術が成功し合併症もなければ、生存率は90%以上ともいわれています。
これらのことから、子宮蓄膿症の治療には外科手術が推奨されているのです。
老犬は子宮蓄膿症の手術ができない?
上記で説明したように、子宮蓄膿症の原因を取り除くには、外科手術が最適な治療法とされています。そのため、老犬でも手術を行うのが一般的です。
とはいえ、老犬の手術はリスクが高いのも事実です。持病がある、または状態が悪く麻酔や手術に耐えられないと判断された場合は、手術ができないケースもあります。
犬の子宮蓄膿症の入院日数の目安は?
合併症の状態や手術後の犬の体調などによって大きく変わりますが、入院日数の目安は「3〜5日程度」です。
当然ですが、入院期間が長いほど愛犬のストレスになり、費用もかかります。愛犬や飼い主さま自身の負担を少なくするためにも、早期発見・早期治療が重要です。
犬の子宮蓄膿症は手術しないで薬で治る?
基本的に手術をせずに、薬だけで完治することはありません。なぜなら、薬による治療の目的が、病気を治すことではなく症状を抑えることだからです。
まれに薬によって状態が改善するケースもありますが、残念ながら多くは再発します。投薬は、手術ができない場合に選択される治療法として理解しておくとよいでしょう。
子宮蓄膿症の手術後に気をつけることは?
愛犬に早く元気になってもらうためにも、飼い主さまが手術後に気をつけるべきことは以下の3つです。
- 愛犬の様子を常に観察する
- 処方された薬をきちんと飲ませる
- 傷口を舐めさせない(エリザベスカラーの着用)
また、手術後は、メンタル的にも身体的にも不安定になりがちです。少しでも異変がみられたら、すぐに病院に行ける準備をしておくと良いでしょう。
子宮蓄膿症の手術は避妊手術と何が違う?
子宮蓄膿症の手術は、子宮と卵巣を摘出する処置を行う点では通常の避妊手術と同じです。しかし、以下に示すポイントにおいて、子宮蓄膿症の手術と避妊手術は大きく異なります。
- 手術を行うリスク
- 傷口の大きさ
- 入院期間
一般的に避妊手術が行われる生後6か月ごろの犬は、健康で体力もあります。一方で、子宮蓄膿症になる犬は高齢の犬が多く、若いころと比べると体への負担も大きくなるでしょう。
さらに、避妊手術と比べて子宮蓄膿症の手術は、費用が高くなる傾向にあります。高額な治療費に対する備えは大切です。
犬の子宮蓄膿症はペット保険で補償される?
ここまでを読んで「子宮蓄膿症が保険で補償されるのであれば、高額な治療費に備えてペット保険に加入したい」と思われた飼い主さまもいるかもしれません。
犬の子宮蓄膿症は、多くのペット保険で補償されます。加入するペット保険の種類によっては、補償される割合や補償内容が異なるので、事前に確認しましょう。
ちなみに、ペット保険では、予防目的の手術は補償の対象外です。よって、避妊手術はペット保険で補償されません。
犬の子宮蓄膿症を予防するには?
明確な予防法がない病気も多い中、子宮蓄膿症には“避妊手術”という有効な予防法があります。子犬を産ませる予定がない場合は、避妊手術を行いましょう。そうすれば、子宮蓄膿症だけでなく卵巣嚢腫や乳腺腫瘍など、さまざまな病気の予防にもつながります。
一方、避妊手術を受けさせない選択をした場合は、早期発見が重要です。日ごろから、発情の記録を付け、犬の食欲や水を飲む量を確認してください。
さらに、発情期には特に愛犬の様子や陰部の状態を細かくチェックしましょう。
まとめ│子宮蓄膿症の手術費用は高額になる可能性あり!
この記事では、犬の子宮蓄膿症について解説しました。
最後に、この記事のポイントをまとめておきます。
- 陰部から膿が出ていたら、子宮蓄膿症の疑いあり
- 治療費の相場は総額15~30万円程度
- 予防には避妊手術が最も効果的
子宮蓄膿症の治療費は、高額になりがちです。
いざというとき、治療費が払えないという理由で治療を受けられない状況は辛いものでしょう。
高額な治療費が心配な方は、もしものときの備えとして、ペット保険への加入を検討してみてください。
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