犬のよだれの量には個体差があり、よだれが多い犬もよだれをまったく垂らさない犬もいます。よだれが多い犬と一緒に生活して、いつもポタポタとよだれを垂らしているとよだれの原因が気になる飼い主さまは多いでしょう。
本記事では、犬がよだれを垂らす原因や対処法を紹介します。よだれが多くなったときに気をつけたい病気についても紹介しますので、愛犬のよだれが気になる方はぜひ最後までご覧ください。
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犬が大量のよだれを垂らす原因
犬のよだれが異常に多いときは、心理的または生理的な原因、病気などの可能性があります。よだれが多いというだけで原因の特定は難しく、ぐったりしている様子や嘔吐・下痢を繰り返しているなど、ほかの症状も確認することが重要です。よだれを垂らしている原因を探り、正しい対処を行いましょう。
暑さを感じている
犬は、暑いときに体温調節のために舌を出して呼吸をする「パンティング」を行います。口を開けた状態で呼吸を行うため、よだれの量が増えます。暑くなるとパンティングをする回数も増え、よだれが垂れやすくなるでしょう。
車酔いをしている
犬は、人間と同様に乗り物酔いをすることがあります。乗り物酔いすると吐き気を催し、吐き気とともによだれが増えてしまう犬もいます。ドライブ中に、愛犬のよだれが増えている様子があれば車酔いを疑いましょう。
空腹感を感じている
犬は、お腹が空いているときに、食べ物を前にするとよだれが増えることがあります。犬は食べ物のにおいを感知すると、食べ物を食べる前の準備として唾液が多く分泌されます。空腹時によだれが垂れることは、生理現象のため、とくに対策は必要ありません。
刺激的な味を感じた
犬は、薬などの苦みを感じるため、苦みの強いものを口にするとよだれが増える場合があります。また、洗剤などの刺激の強いものを飲み込んだ際にもよだれが出ます。洗剤など化学物質を誤飲したときは、すぐに動物病院に連れていきましょう。
ストレスを感じている
居心地の悪い環境や慣れない環境に行くと、ストレスや緊張を感じ、交感神経が優位になります。交感神経系が優位になると、よだれの量が増えます。神経の切り替えは意識的には行えないため、過度なストレスを与えないように注意することが大切です。
リラックスしている
リラックスしているときに優位になる副交感神経も唾液量に関係があります。副交感神経が優位になると、唾液量が増える犬もいるようです。副交感神経の影響でよだれが出る場合は、比較的サラサラとしたよだれがみられます。
病気や体調不良
よだれが常に大量に垂れている場合は、病気の可能性があります。症状としてよだれがみられる病気は、さまざまです。よだれの量が気になったときには、唾液だけでなく、ほかに症状がないかをよくチェックすることが重要です。
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犬のよだれで考えられる病気
ここからは、犬のよだれが大量に出ているときに考えられる病気を9つ紹介します。
口腔内トラブル
よだれがポタポタと垂れているときは、口内炎や舌炎、口腔内腫瘍など口腔内に関する病気が疑われます。よだれのほかにも、口臭が強かったり、食欲不振になったりしている場合は注意が必要です。
歯周病・歯肉炎
よだれがいつもより増える以外に、歯茎が赤くなり腫れていたら、歯周病や歯肉炎を疑いましょう。ほかにも、よだれに血が混じっていたり、顔全体が腫れたりといった症状がみられることもあります。歯周病や歯肉炎は、最終的には歯が抜けてしまうため、早期治療が大切です。
咽頭炎
咽頭炎(いんとうえん)とは、食道や気管の入り口が炎症を起こしている病気です。ウイルスや細菌、口内炎などの周辺部分の炎症によって引き起こされるといわれています。よだれ以外にも、喉やリンパの腫れ、咳、呼吸障害などがみられます。
胃拡張・捻転症候群
胃拡張・捻転症候群とは、胃のなかで大量のガスが発生し、胃が捻転する症状です。大型犬が食後に運動することがきっかけで起こるケースがあります。落ち着きなく歩き回ったり、吐こうとしても吐けない様子がみられたり、大量のよだれが出てきて急激に腹部が膨らんだりするなどが主な症状です。命の危険がある病気のため、すぐに病院で治療を受けましょう。
急性膵炎
急性膵炎は、脂肪の多い食事や薬物、内分泌疾患によって引き起こされる病気です。よだれだけでなく、激しい腹痛、下痢、嘔吐などの症状がみられます。重症化すると、呼吸不全が起こり、ショック死する場合もある危険な病気です。
てんかん・脳腫瘍
てんかんや脳腫瘍など脳の病気でよだれが増えることがあります。とくに大量のよだれは、てんかん発作の前兆症状の1つで、ほかにも落ち着きなくうろうろする様子がみられたら、てんかん発作が起こる可能性が高いでしょう。
ジステンパー・狂犬病
ジステンパーや狂犬病になると、神経が麻痺して唾液が飲み込めなくなるため、よだれが垂れるようになります。ジステンパーの場合、発熱や食欲低下、鼻水、鼻鏡のひび割れ、ハードパット、神経症状などがみられます。狂犬病になると、犬の性格が変わり、異常な興奮と攻撃性をみせるようになります。日本では現在狂犬病の発症報告はありません。
熱中症
熱中症になると、体温調節がうまくできなくなり、口を開けてパンティングをするため、よだれが垂れやすくなります。ほかにも呼吸の荒さやふらつき、下痢、嘔吐などの症状があらわれます。ふらつきがある場合は、重篤な状態である可能性が高く、早急に対処が必要です。
異物誤飲
玉ねぎやチョコレートなど犬にとって中毒となる食材を食べてしまった場合や、おもちゃなどの誤飲は、よだれが増えることがあります。異物誤飲は、命にかかわる重大事故のため、様子見をせず、動物病院での処置を早急に受けましょう。
病院に連れて行くタイミング
よだれが垂れているという症状だけで、病院に連れていくべきかどうか迷ってしまう飼い主さまも多いでしょう。ここでは、よだれに関する病気で病院に連れて行った方がよいタイミングを紹介します。
口腔内トラブル
口腔内のトラブルのなかで、歯周病は放置すると悪化する病気です。悪化すると、歯が抜け落ち、口のなかの痛みから食欲が低下する犬もいます。また、犬の口腔内悪性腫瘍は、「メラノーマ」が最も多く、悪性度が高い腫瘍のため、早めの受診と治療をおすすめします。
胃拡張・捻転症候群
胃拡張・捻転症候群は、治療が遅れると、血液の循環が止まり、ショック状態に陥ることがあります。胃拡張や捻転症候群が原因でよだれが出ている場合、吐きたくても吐けない様子がみられます。吐けない様子がみられたら、胃拡張・捻転症候群を疑い、すぐに病院に連れていきましょう。
熱中症
熱中症は、初期であればよだれ以外にも呼吸の荒さや体の熱さ、ふらつきなどがあらわれます。初期症状の段階でも、上記の症状がある場合は、病院の受診をおすすめします。熱中症は、重症化するとぐったりとします。多臓器不全となり死に至る可能性もある怖い病気なので、早めに治療を受けましょう。
脳疾患
犬がよだれを垂らしながらけいれんや発作を起こしたときは、すぐに病院へ連れて行きます。脳疾患は、治療をせずにそのままにしておくと、どんどん悪化します。とくに、5分以上発作が止まらなかったり、1日に複数回発作を起こしたりする場合は、早急に病院を受診しましょう。
※補足情報※
動物医療は自由診療のため、ペット保険に加入していなければ医療費は全額自己負担となります。
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よだれが多いときにチェックするポイント
よだれが多いときは、重い病気が隠れている可能性もあるので、なぜよだれが出ているのかを確認することが重要です。ここでは、よだれが多いときにチェックしたいポイントを5つ紹介します。
唾液の質や量
よだれの質や量をみると、病気が原因かどうかを知ることができます。よだれの量がどのくらい多いか、よだれはネバネバしているか、サラサラしているか、臭いはあるか、気泡を含んでいるかなどをチェックしましょう。
よだれに粘り気があったり、臭いがいつもより強かったり、気泡が多めに含まれていたりする場合は、病気が原因でよだれが出ている可能性が高くなります。
嘔吐
よだれとともに嘔吐もある場合は、嘔吐した内容物をチェックしましょう。黄色っぽい胆汁混じりの胃液を吐いたときは、複数回の嘔吐、ストレスや腎臓病、肝炎の疑いがあります。
消化していないフードを嘔吐したときは、ストレスや早食いなどが原因で、胃腸など消化器系の機能が低下している可能性があります。また、嘔吐したなかに異物が混ざっていたら、おもちゃなどを誤飲しているため、動物病院の受診が必要です。
歯垢や歯石
よだれの多さが気になってきたら、歯垢や歯石がたまっていないか確認が大切です。歯垢や歯石は細菌が集まりやすく、歯周病の原因となります。歯周病は、口腔内に悪影響を及ぼすだけでなく、血液を介して細菌が体中に広がるため、ほかの臓器の病気の原因となります。
歯垢や歯石は、はみがきである程度予防できます。家で歯垢や歯石が取れない場合は、動物病院でスケーリング処置をしてもらいましょう。動物病院では全身麻酔下で行いますので、しっかり相談してください。
口角
よだれが垂れているときに、口角が下がっていたり、左右で口角の位置が違っていたりしないかチェックしましょう。口角の位置によっては、脳神経に問題が起きている可能性があります。脳神経に問題があるときは、口や目の動きにも違和感を覚えることもあります。
呼吸の速さ
よだれの多さに加えて呼吸が速い場合は、熱中症の可能性が高くなります。よだれが多いときには、呼吸音の大きさや息づかい、上を向いて呼吸していないかなど、注意して観察しましょう。
よだれが多くなりやすい犬種
唾液は、犬種によっても量に違いがあり、よだれが出やすい犬種とよだれが出にくい犬種がいます。マスティフ、ニューファンドランド、セント・バーナードなどの超大型犬は、唾液の量が多く、よだれが多い犬種といえます。
小型犬のなかでも、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、イタリアン・グレーハウンドは、歯周病になりやすい犬種のため、歯周病の影響でよだれが出ることがあります。また、パグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種は、体温調節が苦手で熱中症になりやすいため注意しましょう。
よだれによってほかの犬や人に感染する病気
症状としてよだれの量が多くなる犬ジステンパーと狂犬病は、よだれを介してほかの犬に感染する可能性があります。犬ジステンパーの場合、よだれのほかにも目やにや鼻水によってうつしてしまうこともあります。
犬から人へ感染するパスツレラ症は、犬のよだれから細菌に感染するおそれがあります。よだれから感染すると、気管支炎や痰がでるなどの症状がみられます。犬を触ったあとは、かならず手を洗うことが大切です。
犬のよだれ対策と予防方法
犬の口周りを清潔に保つためには、よだれのケアをする必要があります。また、飼い主さまにもできるよだれが垂れない対処法もあります。愛犬のよだれが気になる方はぜひ参考にしてください。
よだれやけのケア
犬のよだれが多く、常に口周りが湿っていると、被毛が茶色く変色する「よだれやけ」を起こす可能性があります。清潔な布でこまめに拭いたり、なみだやけやよだれやけ専用のクリーナーを使ったりと、こまめにケアを行いましょう。
口腔ケア
犬は、口腔内に異常があるとよだれを垂らしやすくなります。よだれを予防するには、口腔内や歯のケアを定期的に行う必要があります。歯磨きを習慣づけて、愛犬の口腔内に異常がないか確認することもポイントです。
部屋を片付ける
犬は誤飲事故が原因で、よだれが多くなることがあるため、異物を飲み込まないように部屋を片づけておきましょう。特に犬が飲み込むと危険なものや、中毒症状を引き起こす可能性のある食材は、犬が届かないところにしまう必要があります。
熱中症対策
犬は、気温が高くなると、体温調節のためにパンティングを行い、よだれが垂れやすくなります。気温が高い状態が続くと、熱中症になる可能性もあるため、夏の暑い時間帯は外にでないなどの対策が必要です。熱中症は、夏だけでなく冬にもなる恐れがあるので、室温管理を徹底して行いましょう。
まとめ
今回は、犬がよだれを垂らす原因や対処法、よだれが多くなったときに気をつけたい病気について紹介しました。
・よだれの原因は、心理的なものから病気までさまざま
・よだれ以外に症状はないかチェックすることが重要
・ふらつきや痙攣、ぐったりしていれば、早急に病院へ
・よだれやけ防止のためにも、定期的なケアが必要
犬のよだれを介して人に感染する病気もあります。日ごろから愛犬と触れ合ったときは、手洗いすることを忘れないようにしましょう。
※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
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