犬の膿皮症

愛犬がよくかゆがって体をかきむしっている、皮膚がただれているといった症状が見られた場合、膿皮症(のうひしょう)になっている可能性があります。

ただ「膿皮症ってどんな病気なの?」「なぜ膿皮症になってしまうのだろう」と疑問に思う方も多いでしょう。

そこで今回は

  • 犬の膿皮症とは
  • 犬が膿皮症になる3つの原因
  • 膿皮症を予防する3つの方法

などについてご紹介します。

膿皮症になった場合の自宅でのケア方法もわかるので、犬の皮膚の病気が気になるという方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

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目次

犬の膿皮症とは

はじめに、犬の膿皮症について解説します。犬の膿皮症は主に下記の3種類に分けられます。

  • 表面性膿皮症
  • 表在性膿皮症
  • 深在性膿皮症

表面性膿皮症は、犬の皮膚の表面がただれる症状が見られます。皮膚に赤いブツブツができたり、吹き出物ができたりします。

 

表在性膿皮症は、皮膚の最表面である表皮と毛根部分の毛包内が、ただれたり化膿したりするもので、膿皮症で最も多くみられるパターンです。

 

深在性膿皮症は、皮膚の奥まで皮膚炎を起こしている状態です。表在性膿皮症よりも、深い部分まで炎症が広がっているため症状もひどく、治療は長期化する傾向にあります。

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犬の膿皮症の症状について

犬の膿皮症の主な症状

犬の膿皮症の主な症状は以下のとおりです。

  • 赤いブツブツができる
  • 皮膚が膿(う)んでいる
  • 強いかゆみが出る
  • 毛が抜ける
  • 皮膚がめくれる
  • 皮膚が黒ずむ

上記のような症状が、背中やお腹、足の付け根など、体のあちこちに現れます。最初はそれほどかゆみはないのですが、徐々に膿皮症の範囲が広がり、やがてかゆみが強くなります。足の爪で引っかくことによって皮膚に傷が付き、湿疹を引き起こします。

 

症状が進行すると、フケやかさぶたが付着することでできる表皮小環(ひょうひしょうかん)がみられ、炎症の跡は色素沈着して皮膚も黒ずんできます。

犬が膿皮症になる3つの原因

次に、犬が膿皮症になる原因について解説します。なぜ、犬が膿皮症になってしまうのか気になっている方はチェックしてみてください。

犬の皮膚に付いているブドウ球菌の繁殖

犬が膿皮症になるのは、皮膚に付いているブドウ球菌などが異常に繁殖するためです。人間も犬も皮膚には一定数の菌が付いており、皮膚環境のバランスが崩れるとブドウ球菌が過剰に繁殖し、膿皮症を引き起こします。

特に、湿気が多い梅雨の時期に発症率が高まります。

 

アトピーなどほかの病気の影響

アトピー、食物アレルギー、脂漏症、糖尿病、肝臓病、甲状腺機能の低下などの病気の場合も、膿皮症の症状が現れるケースがあります。特に免疫力が低い子犬やシニア犬、アレルギー体質の子は注意をしましょう。

通常よりも治りにくい場合は基礎疾患が関係していることが多いので、血液検査やアレルギー検査などの追加検査をして原因を調べます。

 

生活環境によるもの

高温多湿かつ掃除が行き届いていない環境で生活をしていると、皮膚のブドウ球菌は繁殖が活発になり、膿皮症を引き起こす原因となります。

対策として、愛犬が普段過ごす場所はこまめに掃除し、空気清浄機を使ってきれいな空気を保ち、夏場はエアコンを使って部屋の温度を調整するなど、生活環境を整えておくとよいでしょう。

膿皮症になりやすい犬種

膿皮症になりやすい犬種

続いて、膿皮症になりやすい犬種について解説します。膿皮症になりやすい犬種は下記のとおりです。

  • 柴犬
  • シー・ズー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ウエスティ
  • フレンチ・ブルドッグ

アレルギーのある犬や甲状腺機能低下症の犬など、皮膚の抵抗力が低い状態になっている犬は膿皮症になりやすく治りにくい傾向があります。また、毛が長かったり密集したりしている犬も菌が繁殖しやすいため、こまめなお手入れが必要です。

膿皮症は人や犬にうつるの?

膿皮症は皮膚の抵抗力が大きく影響する皮膚疾患です。一般的に人やほかの犬に移ることはないといわれています。

膿皮症の検査方法・検査費について

膿皮症の検査方法は、まず皮膚の表面に細菌がどの程度存在するのかを確認します。

 

主に皮膚に付着している細菌を顕微鏡で観察をしますが、基礎疾患が疑われる場合は血液検査も行われます。皮膚の状態によっては複数の検査を行う場合もあります。

「平成27年度 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」によると、皮膚生検の検査費の目安は4,759円、真菌培養の検査費用で2,192円です。

細菌同定検査・薬剤感受性テストの目安は約1万円となります。

犬の膿皮症の診断・検査方法について

犬の膿皮症の診断は下記のような検査により行います。

■犬の膿皮症の検査方法
・皮膚検査
・細菌培養検査
・基礎疾患の精査(血液、画像検査など)

 

犬の膿皮症の検査では、通常皮膚検査を行い診断していきますが、再発を繰り返している場合や、難治性の場合などには、細菌培養検査や基礎疾患がないかの精査も必要です。

 

皮膚検査

犬の膿皮症の診断では、皮膚検査で細菌や白血球を検出することで診断を行っていきます。

 

皮膚検査は、テープ検査やスライドガラスを皮膚に押し当てるスタンプ検査での診断が可能で、ほとんど痛みを伴うことなく迅速に診断できます。

また皮膚の症状で、真菌やニキビダニ症などほかの疾患を疑う場合には、ウッド灯検査や皮膚掻爬検査などが必要になってきます。

 

細菌培養検査

細菌培養検査は、何度も膿皮症が再発している、または難治性の場合や抗生剤に対する反応が悪い場合などに行われる検査です。

皮膚から採取してきた細菌を培養し、どの薬が効くかを薬剤感受性試験を行っていきます。

通常、結果が出るまで1週間ほどかかりますが、確実に効く抗生剤を見つけられるため、診断や治療に非常に役立ちます。薬剤耐性菌の出現を防ぐためにも重要な検査です。

 

基礎疾患の精査(血液、画像検査)

膿皮症がなかなか治らない、難治性の場合や再発を繰り返す場合には、ほかの基礎疾患が疑われるため精査しなければなりません。

よくある基礎疾患としては、以下のとおりです。

・アトピー性皮膚炎
・食物アレルギー
・皮膚糸状菌症
・ニキビダニ症
・ノミアレルギー性皮膚炎
・クッシング症候群
・甲状腺機能低下症
・皮膚リンパ腫

こうした基礎疾患を精査するためには、血液検査やレントゲン、エコーといった皮膚検査以外の検査が必要になってきます。

あまり治療の効果が感じられない場合には、基礎疾患の精査を行ってあげるようにしましょう。

犬の膿皮症の治療方法について

犬の膿皮症は以下のような方法で治療を行います。

■犬の膿皮症の治療方法
・内服薬
・外用薬
・シャンプー療法・薬浴

膿皮症の部位や症状の重症度によって、その子にあった治療法を選択する必要があります。
それぞれについて解説していきます。

 

内服薬

全身に膿皮症の症状が出ている場合は内服薬を投与して治療していきます。犬の膿皮症で必ず使用される内服薬は抗生剤で、検査で検出された細菌に効果のある抗生剤を選択して処方します。

 

犬の膿皮症では、痒みもひどく出ることがあるため、抗生剤のほかに痒み止めやステロイドなどで皮膚の炎症を抑えていくことが必要です。

再発しやすい病気なので、飼い主さんは獣医師の処方に従い、内服薬の投薬を途中で勝手に中断しないようにしてください。

 

外用薬

犬の体の一部分のみに膿皮症の症状が出ている場合には、塗り薬(軟膏など)や消毒液などの外用薬を使用します。外用薬には、抗生剤やステロイドが入っているものもあり、塗るだけで高い効果を発揮してくれます。

 

塗布部分は、犬が気にして舐めることもありますので、塗布後5分間ほどは舐めさせないようにしてください。

また、塗りすぎて皮膚が薄くなるといった副作用もみられることがありますので、決められた回数だけ塗るようにしましょう。

 

シャンプー療法・薬浴

シャンプー療法や薬浴も犬の膿皮症ではよく行われる治療方法です。

難治性の場合や、基礎疾患としてアトピー性皮膚炎、脂漏症がある犬にはとくに有効です。
また、足先の痒みや肉球の間など、なかなか外用薬が塗りにくい部分に対しては、薬浴を行って治療していきます。

 

シャンプーは、週に1〜2回行ってあげるのが理想です。しっかりと薬用成分を浸透させるために、状態の悪いところから洗いはじめ、できるだけ10~15分ほどかけてシャンプーするようにしてください。殺菌成分の入った薬用シャンプーを使用することが大切です。薬用シャンプーは泡立ちが悪いものがほとんどです。泡立たなくても問題ありませんので、症状のひどいところから優しく洗っていきましょう。

犬の膿皮症でかかる一般的な治療費

犬の膿皮症でかかる治療費例は以下のとおりです。

診察・治療内容 治療費
診察料 750円
皮膚検査 750円
細菌培養検査 7,700円
内服薬 6,000円~(1か月)
外用薬 1,000円〜2,000円
シャンプー・薬浴 2,000~4,000円

膿皮症でも、重症化している、または再発を繰り返している場合は、皮膚治癒として2〜4週間の投薬が必要です。

飼い主さんは、治ったと思って勝手に治療を中断しないようにしましょう。

また治療効果が認められず、再発を繰り返す場合には、ホルモンの病気やアレルギーなど何らかの病気が隠れている可能性もあります。そのため、基礎疾患の精査が必要になりますので、動物病院に連れていき検査を受けるようにしましょう。

膿皮症を予防する3つの方法

膿皮症を予防するシャンプー

ここからは、膿皮症の予防方法について解説します。愛犬が膿皮症にならないよう、これからお伝えする方法を実践してみてください。

部屋の湿度や温度を適切に保つ

高温多湿になると菌が繫殖しやすくなるため、適切な湿度と温度を保つよう心掛けましょう。

空気清浄機を使って除湿をし、夏場はエアコンを使って部屋の温度を調整するなど、生活環境を整えておいてください。

 

皮膚のコンディションを整えておく

愛犬が膿皮症にならないよう、定期的にシャンプーを行い、皮膚を良い状態に保っておきましょう。

愛犬をシャンプーするときは、下記の順番で行ってみてください。

  • 35℃前後のぬるま湯で体をすすぐ
  • シャンプー剤をしっかり泡立ててから洗う
  • 毛の流れにそって爪を立てずに洗う
  • 泡をしっかり洗い流し、保湿剤を塗る
  • タオルドライで水気をしっかり切ってからドライヤーを当てる

また、排泄後や食事後は愛犬の汚れを拭き取り、清潔にしておきましょう。定期的にブラッシングも行って皮膚の風通しを良くし、皮膚に異常がないかもチェックするようにしてください。

 

愛犬に合ったドッグフードを与える

膿皮症を予防するために、ドッグフードにも気をつけましょう。

愛犬に合わないドッグフードを与え続けてしまうと、膿皮症になる原因となってしまう場合があります。特に、犬に食物アレルギーがある場合は、ドッグフードに使われている原材料によって、症状の悪化を招くおそれもあるため注意が必要です。

膿皮症の自宅でのケア方法について

愛犬が膿皮症になってしまった場合は、下記のケア方法を実践してみてください。

  • 皮膚を清潔に保つ
  • 濡れたときはしっかり乾かす
  • 塗り薬を使う
  • 栄養価の高い食事を心掛ける

炎症している部分が膿んでくる、フケが出てくるといった際は、消毒薬で消毒するようにしてください。アルコールは刺激が強いので使用しないでください。

 

散歩中に雨が降ってきた場合は、帰宅後にしっかりと水気を拭き取り、ドライヤーで乾かします。

 

また、免疫力を高めておくのも重要なので、栄養バランスが整った総合脂肪酸や消化酵素、ビタミンA、C、Eが含まれているドッグフードを選ぶのもよいでしょう。

まとめ

今回は犬の膿皮症についてお伝えしましたが、まとめると以下のとおりです。

■犬が膿皮症になる原因
・犬の皮膚に付いているブドウ球菌の繁殖
・アトピーなどほかの病気の影響
・生活環境によるもの

 

■膿皮症の予防方法
・部屋の湿度や温度を適切に保つ
・皮膚のコンディションを整えておく
・愛犬に合ったドッグフードを与える

 

犬の膿皮症は皮膚に炎症が起き、症状が悪化すると痛みを感じたり、炎症した部分に熱を持ったりするようになります。

かゆみや痛みがあると愛犬にとってストレスとなるため、できるだけ早く動物病院に行って診察を受けましょう。

また、日ごろから生活環境を整え、ブラッシングやシャンプーをしてケアし、肌トラブルを予防するよう心掛けてください。

 

※動物病院は自由診療のため、医療費が高額になる可能性があります。
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獣医師平松先生
この記事の監修者 平松 育子
獣医師・ペットライター。山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月、有限会社ふくふく動物病院・取締役、院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かしペットに関する情報をお届けします。

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