猫の腎臓病の症状や治療費、保険

「水をよく飲んでおしっこを大量にする」「嘔吐が増えてきた」といった症状が猫にみられた場合には、腎不全という病気になっている可能性があります。

 

猫の飲水量や尿量が増え、嘔吐などさまざまな症状を引き起こす腎不全とは、どのような病気なのでしょうか。また、腎不全の治療法はどのようなものになるのでしょうか。

 

本記事では、猫の腎不全について以下の点を中心に解説していきます。

【この記事でわかること】

  • 猫の腎不全とは
  • 腎不全の症状や原因
  • 腎不全の治療や予防方法
  • 腎臓病に対応するペット保険の選び方

腎不全についてしっかり理解して、予防や治療を行ってあげましょう。

 

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目次

猫の「腎臓病(腎不全)」を徹底解説!

猫の腎不全は、腎臓の機能が低下してしまう病気であり、15歳以上の高齢猫の約80%以上が腎不全に罹患しているといわれるほど猫に多い病気です。

 

原因や症状によって「急性腎不全」と「慢性腎不全」に区別されており、急性腎不全の場合には、急激に症状を発症し命を落とす可能性もあるので注意が必要です。

 

また腎臓は、慢性的に機能が低下してしまうと回復することはほとんどない臓器のため、慢性腎不全となってしまった場合には、生涯に渡って治療が必要になります。

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腎臓病(腎不全)はどんな症状?

急性腎不全の症状は?

猫の腎臓病の症状は、「急性腎不全」と「慢性腎不全」で少し違いがありますが、腎不全でみられる症状をしっかりと把握して早期に発見してあげることが大切です。

 

ここからは、「急性腎不全」と「慢性腎不全」の症状をそれぞれ詳しく解説していきます。

 

急性腎不全の症状

急性腎不全の症状は以下の通りです。

  • 嘔吐
  • 排尿を認めない
  • 急にぐったりする
  • 意識が朦朧とする
  • 呼吸促迫

急性腎不全は、その名の通り、急激に嘔吐やぐったりする、呼吸促迫などの症状が現れます。

 

急激な腎機能の低下により、尿を作れない「無尿」と呼ばれる状態になることもあるので、排尿の様子も普段からしっかり確認しておきましょう。

 

急性腎不全は、命を落とす可能性も高い病気であるので、疑わしい症状を認めた際には動物病院を受診するようにしてください。

 

慢性腎不全の症状

慢性腎不全の症状は以下の通りです。

  • 多飲多尿(水をいっぱい飲んで、排尿をたくさんする)
  • 尿の色が薄い
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 脱水
  • 便秘
  • 貧血

慢性腎不全は、病気の進行度により、4段階にステージ分類されています。ここからは、それぞれのステージについて解説していきます。

 

  • ステージ1

慢性腎不全のステージ1は、特に症状も認められないことが多いので、飼い主さまも気づかない場合がほとんどです。

 

しかし、検査を行うと以下のような異常がみられます。

  • 尿タンパクが出ている
  • 尿比重が低下している(尿がうまく濃縮できていない)
  • 腎臓の形に異常が認められる

早期発見のためにも定期的な健康診断が大切です。

 

  • ステージ2

嘔吐」や「多飲多尿」などの症状がみられる場合には、ステージ2まで進行していることも多くあります。血液検査でも、腎数値であるクレアチニンが上昇しています。

 

ステージ2では、腎臓の療法食を食べさせる治療を始める段階ですので、動物病院で処方してもらうようにしましょう。

 

  • ステージ3

慢性腎不全のステージ3では、さらに腎機能の低下が進行しているため、体の中に老廃物が蓄積し、より重度な症状がみられることが多いです。

  • 頻回の嘔吐
  • 貧血
  • 悪心による流涎(よだれ)
  • 口内炎(尿毒症)

ステージ3では、腎臓の機能を助けるためにも輸液療法が適用になります。

 

  • ステージ4

ステージ4まで進行した腎不全では、輸液療法を行ってもなかなか治療に反応してくれません。食事も十分に取れなくなってくることがほとんどでしょう。

 

十分な栄養摂取を行うために、栄養チューブを鼻や口から入れることもあります。状態にもよりますが、数ヶ月ほどの余命になることがほとんどです。

腎臓病(腎不全)の原因となるのは?

腎不全の原因は、さまざま考えられます。

 

ここからは、腎不全の原因を「急性腎不全」と「慢性腎不全」に分けて解説していきます。

 

飼い主さまが気を付けるべきポイントもさまざまですので、しっかり把握しておくようにしましょう。

 

急性腎不全の原因

急性腎不全の原因としては、大きく以下の3つが考えられます。

  • 腎性
  • 腎前性
  • 腎後性

それぞれの原因について詳しく解説していきます。

 

腎性

腎性とは、腎臓自体に何らかの問題がある状態です。具体的には、以下のような原因が考えられます。

  • 中毒(ユリ科植物やぶどう)による腎障害
  • 腎炎
  • 腎臓腫瘍
  • レプトスピラなどの感染症

猫は家の中の植物を食べてしまうこともあるので、腎毒性のあるユリ科の植物はなるべく置かないようにしましょう。

 

腎前性

腎前性とは、腎臓への血流が阻害されて腎機能が低下してしまい腎不全になる状態です。具体的には以下のような原因が考えられます。

  • 脱水
  • 心臓病
  • ショック症状(熱中症など)

腎臓以外に原因となる基礎疾患が隠れている場合があるので、精査が必要になることが多くあります。

 

腎後性

腎後性とは、尿が排泄される尿路系に問題があり腎機能が低下してしまう状態です。具体的には、以下のような原因が考えられます。

  • 尿管結石
  • 尿道結石
  • 腫瘍による尿路の圧迫

結石による尿路閉塞が多く、排尿ができない場合がほとんどですので、飼い主さまは、排尿の有無を確認してみてください。

 

慢性腎不全の原因

慢性腎不全では、腎臓が長い時間をかけて障害を受けていき、徐々に腎機能が低下していきます。

具体的には、以下のような原因が考えられます。

  • 先天的な腎臓の構造異常
  • 尿路結石の閉塞
  • 腎炎
  • 高血圧
  • 尿路感染
  • 腎臓腫瘍

特に、猫では先天的に腎臓の構造に異常がある場合もあるので、特に気になる症状がなくても、一度超音波検査やレントゲン検査などの画像検査を行っておくと良いでしょう。

腎臓病(腎不全)になりやすい猫種

腎臓病になりやすい猫種は?

腎不全は、全ての猫に起こりうる可能性があります。しかし、猫の中には遺伝的に腎臓の形成不全がある猫種も存在するので、注意が必要です。

 

腎不全を起こしやすい猫種として、以下がよく知られています。

  • ヒマラヤン
  • ペルシャ猫
  • アビシニアン
  • メインクーン

飼い主さまがこれらの猫種を飼われている場合には、一度動物病院で画像検査を受けておいた方が安心でしょう。

腎臓病(腎不全)の検査方法は?

腎臓病の検査方法は、以下の通りです。

  • 血液検査
  • レントゲン、エコー検査
  • 尿検査
  • 血圧検査

血液検査、レントゲン、エコー検査で腎数値と腎臓の構造異常を検査していきます。また、尿検査と血圧検査も腎不全の治療方針に関わってくるため重要です。

 

特に尿検査は、腎臓の機能低下を早期に発見できるといわれています。採尿するだけで行える検査なので、定期的に尿検査を行うことをおすすめします。

腎臓病(腎不全)の治療法とは?

腎不全の治療方法は、原因によってさまざまです。ここからは、急性腎不全と慢性腎不全の治療をそれぞれの原因別に解説していきます。

 

急性腎不全の治療法

急性腎不全の治療方法は、原因によってさまざまです。

 

ここからは、急性腎不全の原因として特によくある「尿路疾患が原因の場合」と「中毒が原因の場合」に分けてそれぞれ詳しく解説していきます。

 

尿路疾患が原因の場合

尿路疾患が原因の場合には、尿路閉塞を解除する治療方法が適用となります。

 

尿道に結石が閉塞している場合は、尿道カテーテルで膀胱内に押し戻すことができますが、腎臓から膀胱にかけての尿管に結石が閉塞している場合には手術が必要になります。

 

中毒が原因の場合

中毒が原因の場合には、輸液療法と利尿剤を使って腎臓の機能を保持していきます。

 

急性腎不全によって尿が作れていない「無尿」状態が長く続くと命に関わるので注意が必要です。

 

「無尿」状態が長く続く場合には、腹膜透析と呼ばれる透析治療が適応になる場合もあります。

 

慢性腎不全の治療法

慢性腎不全の治療方法としては、以下の治療方法が考えられます。

  • 投薬
  • 食事療法
  • 輸液療法

慢性腎不全の治療では、食事や通院など飼い主さまの協力が不可欠です。それぞれについて詳しく解説していきます。

 

投薬

ステージ2など症状がある腎不全では投薬治療を行います。投薬内容としては、以下のような投薬が考えられます。

  • 降圧薬
  • リン吸着剤

高血圧や蛋白尿がある場合には、降圧剤を使用します。

また、腎不全が進行すると高リン血症になることも多いので、リン吸着剤を投薬する場合もあります。さらに、飲み薬やサプリメントの選択も重要です。

 

これらは高血圧、タンパク尿、貧血、リンの高値などの症状に応じて異なります。腎機能の低下を抑制する特定の薬や、老廃物の分解を促すサプリメントも利用されることがあります。

 

これらの薬剤やサプリメントにより、症状の進行を緩やかにし、猫の健康維持を支援することが可能です。

 

適切な治療法の選択には、獣医師との相談が不可欠です。また、薬剤の副作用に注意しながら、猫にとって最適な治療計画を立てるようにしましょう。

 

食事療法

食事療法としては、腎臓の療法食を与えることが推奨されます。

 

腎臓療法食は、腎不全の猫に最適なタンパク質やミネラル量の食事を与えることができます。

 

うまく活用してあげると腎不全の進行を防ぐことができるので、食べてくれるようならば早めのうちから与えてあげるようにしましょう。

 

さらに具体的には、バランスの良い食事を心がけ、必要な栄養素を適切に配合したフードを選びます。また、腎臓病に効果的な水分摂取を促すために、家の中に複数の水飲み場を設置することも推奨されています。

 

これにより、水を十分に摂取しやすくなり、腎臓の健康をサポートすることが可能です。フードの選択は獣医師と相談し、猫の健康状態に合わせた最適なものを選びましょう。

 

輸液療法

慢性腎不全で薬物療法や食事療法だけでは、うまく管理ができない場合には、輸液療法が必要になってきます。

 

具体的には、定期的に皮下点滴を行ってあげ、体の脱水を防ぎつつ腎臓への血流を促します。

 

脱水が改善すると体調もよくなりますので、通院や自宅でも皮下点滴を行ってあげるようにしましょう。

腎臓病(腎不全)の治療費

腎臓病の治療費の目安は以下の通りです。

 

診察・治療内容 治療費
診察料 750円
血液検査 6,250円
尿検査 1,500円
血圧測定 1,500円
レントゲン検査 4,000円
エコー検査 4,000円
内服薬 5,000円(1か月あたり)
皮下点滴 2,500円
静脈点滴 4,000円
腹膜透析 8,750円
入院 7,500円(3日あたり)

 

腎不全の原因を探るためにもさまざまな検査が必要になってきます。

 

急性腎不全など重症例の場合には、検査を含めて入院が長引くと1回の入院で10万円近く必要になることもあるでしょう。

腎臓病(腎不全)は治る?

急性腎不全により、一時的に腎機能が低下している場合には、うまく治療できると腎機能は元に戻っていきます。しかし、慢性腎不全のような、徐々に腎機能が失われていく病態では、腎不全が治ることはほとんどありません。

 

慢性腎不全の場合には、皮下点滴や食事療法によって、腎不全の進行を防止することが大切です。

 

また、早期発見できると早いうちから腎不全の治療を行うことができるため長生きに繋がります。飼い主さまは、定期的に健康診断を受診するようにしてください。

腎臓病(腎不全)になった猫の余命

急性腎不全では、重症度により余命はさまざまですが、慢性腎不全の猫の余命については、以下のように報告されています。

  • ステージ2・・1151日
  • ステージ3・・778日
  • ステージ4・・103日

重症度が高まるごとに余命が短くなるので、早期の治療介入が大切になるでしょう。

猫の腎臓病を予防するには?

猫の腎臓病を予防するには?

急性腎不全を予防するためには、以下のような点について日頃の生活から気をつけておくことが重要です。

  • 腎毒性のあるものを生活環境に置かない
  • 尿路閉塞を起こした場合にはすぐに病院に連れていく
  • 日頃から排尿の有無を確認する

慢性腎不全を予防することは、難しいですが、定期的に検査を行い早期に治療を開始してあげることで健康な子と同様に長生きできる場合もあります。飼い主さまは、毎日の体調チェック定期的な血液検査と画像検査、尿検査を行うようにしてください。

腎臓病はペット保険の補償対象の場合もある

腎臓病は、ペット保険で補償対象となることがあります。保険に加入する前には、どの病気がカバーされるのかをかならず確認することが重要です。ペット保険は通常、予防行為に対しては補償されませんが、加入後に発症したケガや病気は補償の対象となります。

 

したがって、腎臓病を発症した後に保険に加入できたとしても、補償を受けることは原則として不可能です。

 

ペット保険は突発的なケガや病気に備えるためのものであり、すでに症状が出てからの加入では補償を受けることができないため、早めの加入を検討することがが必要とされます。

 

腎臓病に対応するペット保険の選び方のポイント

猫の腎臓病に備えるために適した保険選びのポイントをご紹介します。

 

通院1回あたりの保険金の上限

腎臓病を抱える猫の治療で重要なのが、通院1回あたりの保険金の支払限度額です。この金額は、治療費の自己負担額を大きく左右します。

 

症状が進行すればするほど、通院の頻度が増し、治療費も高額になりがちです。そのため、特に腎臓病のような長期的な治療が必要な場合は、通院1回あたりの支払限度額が手厚い保険を選ぶことが肝心です。

 

1年あたりの保険金の上限

腎臓病をもつ猫の治療には、長期にわたりコストがかかることが多いため、1年あたりの保険金の上限金額である「年間最大補償額」もペット保険を選ぶ際の重要なポイントです。

 

年間最大補償額とは、1年間で保険会社から受け取れる最大の保険金額を示し、治療にかかる費用がこれを超えた場合、超過分は飼い主さまの全額自己負担となります。

 

特に慢性的な疾患である腎臓病の場合、定期的、継続的な治療が必要です。そのため、年間最大補償額によっては、治療費が大きな負担になってしまうかもしれません。

 

適切な保険を選ぶには、まず猫の健康状態と治療が必要な頻度を考慮し、それに見合ったペット保険を選ぶことが重要です。また、比較する際は、年間最大補償額だけでなく、補償内容や保険料も考慮に入れましょう。

 

契約更新時の審査・条件

猫の腎臓病に対応するペット保険を選ぶ際、契約更新時の審査と条件は非常に重要なポイントです。ペット保険によっては、契約を更新する際に審査が行われることがあります。特に慢性的な疾患である腎臓病をもつ猫の場合、保険の更新が拒否されるリスクも考慮することが必要です。

 

保険会社によっては、保険の利用状況によって保険料が上がることや、特定の病気や部位が補償対象外になることがあるため、加入前にこれらの詳細を確認することが大切です。

 

適切なペット保険を選ぶことで、猫の腎臓病にかかる高額な治療費の負担を軽減できるでしょう。保険会社やプランの選択には慎重になり、条件や制限、補償内容を詳しく調べ上げることが重要です。

 

腎臓病を発症していてもペット保険に入れる?

腎臓病をすでに発症している猫の場合、新たにペット保険に加入することは一般的に困難です。多くの保険会社では、持病や治療中のケガ・病気は補償対象外とされるため、腎臓病も例外ではありません。

 

また、腎臓病など特定の病気を発症したことがある場合、加入できないと定めていたり、加入できても関連する病気や部位まで補償対象外とする保険会社もあります。そのため、ペットが健康なうちに保険に加入することが推奨されます。

 

加入前に腎臓病などの慢性疾患がすでに診断されている場合、その治療に関する費用は補償対象外になります。したがって、猫の健康管理と保険選びには、病気の早期発見と予防が重要となります。

腎臓病治療の保険適用例

腎臓病治療における保険金の支払事例には、長期にわたる治療が含まれることが多いです。ペット保険で補償されるのは、たとえば診察料や検査費用、治療薬、場合によっては特定の手術費用などです。これらの費用の一部または全額が、契約に基づき保険金として支払われます。

 

ただし、保険の利用には、契約における自己負担額(免責金額)や保険金の支払上限額に注意が必要です。早めにペット保険を検討し加入しておくことが、突発的な高額な治療費に対しても安心して対応できることにつながるでしょう。

まとめ│腎臓病は猫がかかりやすい病気。早めに保険を検討しよう

今回は、猫の腎不全について解説してきました。

  • 腎不全は急性と慢性に分けられる
  • 急性腎不全は「嘔吐」「無尿」「急にぐったりする」などの症状
  • 慢性腎不全は「多飲多尿」「体重減少」「食欲不振」などの症状
  • 慢性腎不全は、治ることはないが、治療により病気の進行を防止する必要あり
  • 腎不全は、早期発見・治療が大切

腎不全は、猫に非常に多い疾患であり、早期発見・治療が大切です。飼い主さまは普段の生活から猫の状態をしっかりと観察して、腎不全の兆候にいち早く気づいてあげるようにしましょう。

 

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この記事の監修者 ペット保険比較のピクシー編集部
ペット保険の専門家であるメンバーがコラムを監修しています。少額短期保険募集人、損害保険募集人、ファイナンシャルプランナー、愛玩動物飼養管理士、いぬ検定、ペット防災指導員などの数多くの資格を保有。犬や猫などの動物が大好きで、飼育歴は10年以上です。知識や経験を活かして、さまざまなお役立ち情報をお届けします。

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